黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は涼川真里さんの誕生日なので

テイチク SL-1285 

魅惑のギター二重奏 雲にのりたい

発売: 1969年9月

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ジャケット



A1 雲にのりたい (黛ジュン)

A2 或る日突然 (トワ・エ・モア)

A3 恋の奴隷 (奥村チヨ)

A4 禁じられた恋 (森山良子)

A5 粋なうわさ (ヒデとロザンナ)

A6 恋のなごり (小川知子)

B1 大空の彼方 (加山雄三)

B2 愛して愛して (伊東ゆかり)

B3 港町シャンソン (ザ・キャラクターズ)

B4 さすらい人の子守唄 (はしだのりひことシューベルツ) 

B5 こんなにこんなに愛してる (涼川真里)

B6 お気に召すまま (じゅん&ネネ)

 

演奏: 山下三夫/阿部源三郎 (ギター)、テイチク・ニューサウンズ・オーケストラ

編曲: 山倉たかし

定価: 1,500円

 

宗内の世界一好きなシングル、「こんなにこんなに愛してる」のインストヴァージョンが収められているという理由により、歌無歌謡の研究を始める遥か前から我がウォンツリストに常駐していた一枚である。2009年に遂にオークションに出品されているのを発見し、無事落札した。その曲を歌った涼川真里さんの誕生日をお祝いする意味で、今日はこのレコードを選出。

 

テイチクは傘下レーベルのユニオン、70年まで配給していた大映レコードも含め、熱心に歌のない歌謡曲のアルバムを発売しまくり、特に68~69年は主にフィーチャーする楽器を変えつつ乱発同然で、全貌を捉えるには相当のエネルギーが必要とされる。それなりにレア盤と化したものもあって油断できないのだが、特に「こんなに~」の編曲も手掛けた大好きなアレンジャー、山倉たかし氏が関わったものは全て要注意であり、本盤も案の定、彼が全曲のアレンジを手掛けている。1969年の夏を彩ったヒット曲集。以下、聴きどころ。

「雲にのりたい」長山洋子のカヴァーでもお馴染み黛ジュンのNo.4ヒット曲。エレガントなストリングスから入り、「こんなに~」そのもののギターサウンド、最初のドラムフィルの入り方までその曲を踏襲しておりニヤリ。これぞ山倉マジック。以下、この時期の曲が収録されている盤はとにかく手元に集まりすぎ、聴き比べも楽しいのだが、ここではギターアンサンブルを主軸に、洗練された感触が控えめ。そのくせして、ストリングスアレンジに個性がはっきり刻印されている。「禁じられた恋」では案の定、キハーダを鳴らしまくっている(が、最狂ヴァージョンは他にある)。「大空の彼方」では、R&Bとカントリーがエレガントに融合。

そして、問題の「こんなにこんなに愛してる」。セルフリアレンジみたいなものとは言え、ピアノを初めとするこの曲のマジカルな要素をいくつか端折っており、それでもなお孤高の感触を失っていない。テイチクにとっての「推し曲」をさりげなく入れ込んだ企画の勝利。他のアレンジャーがこの曲を料理するのを聴いてみたかった…

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「こんなにこんなに愛してる」ジャケット