黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は吉田拓郎さんの誕生日なので

国文社 SKS-113

フォーク・ムード2

発売: 1976年

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裏ジャケット+帯裏(シリーズ他盤より)



A1 青空、ひとりきり (井上陽水)

A2 俺たちの旅 (中村雅俊)

A3 めまい (小椋佳)

A4 初夏 (ふきのとう)

A5 夢の中へ (井上陽水)

A6 あの日にかえりたい (荒井由実)

B1 「いちご白書」をもう一度 (バンバン)

B2 となりの町のお嬢さん (吉田拓郎) 

B3 傘がない (井上陽水)

B4 氷の世界 (井上陽水)

B5 アザミ嬢のララバイ (中島みゆき)

B6 結婚しようよ (吉田拓郎) 

 

演奏: ニュー・サン・ポップス・オーケストラ

編曲: T. Akano、Y. Koyama

定価: 2,200円

 

昨日に続き、国文社の第2回発売「ニュームードミュージック」シリーズの1枚。主に73~4年の、所謂「ニューミュージック」時代が始まる前のヒット曲を取り上げた『フォーク・ムード』はそれなりに衝撃的な1枚で、そちらにも吉田拓郎作品が2曲含まれているが、今日は敢えて『2』の方を紹介。業界を震撼させたフォーライフ・レコードの設立によりスタートした「ニューミュージック時代」の夜明けに相応しく、そこからの新曲A1とB2が含まれているのが象徴的ながら、タイトルは便宜を図ったように『フォーク・ムード2』。シャープなサウンドは奇を衒ったところがなく、多彩な音色を活かして耳に食い込んでくる。ついでながら、ジャケットも過激。ここでは裏を見せるにとどめておきたい。以下、聴きどころ。

まず耳を捉えるのはふきのとうの第3弾、50位まで昇る地味なヒットとなった「初夏」。まだフォークの名残が残る洗練度の低い曲調ながら、彩りを添えるリコーダーが実に夏らしい爽やかさ。雷鳴を思わせるパーカッションの強調も効果的だ。ちょい前の曲となった「夢の中へ」もリコーダーやチェンバロが入り、一味違うナチュラルな響き。「あの日にかえりたい」はジャジーなフルートが聴きもの。

拓郎のフォーライフ第1弾「となりの町のお嬢さん」はまたもやリコーダーが清涼感を強調する好解釈だが、もうちょっとメロディをひねったアレンジが欲しかったという感も。「傘がない」はエレガントなストリングスを前面に出しているものの、歌がない分ハートブレイカー感が強調もされている(笑)。もしかしたら歌無歌謡界初のみゆきカバーかもしれない「アザミ嬢のララバイ」では、またまた笛類が大活躍。オカリナ、アルトフルート、テナー&アルトリコーダー等が次々に登場、今では想像できない中島みゆきのガーリーな部分を浮き彫りにして見せる。フェイドアウト寸前で張り切り始めるところについつい萌えずにいられない(汗)

結局笛の大活躍が印象に残るだけ、みたいな聴後感だけど、フォークの洗いざらし感が違う次元へと昇華された、みたいなそんなアルバム。ジャケットのエロさとは当然関係ない音楽ですよ。