黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は甲斐よしひろさんの誕生日なので

CBSソニー 18AH-679

最新ヒット歌謡ベスト18

発売: 1979年

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ジャケット



A1 ジパング (ピンク・レディー)

A2 美・サイレント (山口百恵)

A3 カサブランカ・ダンディ (沢田研二)

A4 チャンピオン (アリス)

A5 ガンダーラ (ゴダイゴ)

A6 HERO (ヒーローになる時、それは今) (甲斐バンド)

A7 夢追い酒 (渥美二郎)

A8 性(サガ) (ツイスト)

A9 たとえば…たとえば (渡辺真知子)

B1 夢想花 (円広志)

B2 北国の春 (千昌夫)

B3 天までとどけ (さだまさし)

B4 微笑日記 (榊原郁恵)

B5 花街の母 (金田たつえ)

B6 いい日旅立ち (山口百恵) 

B7 惜春 (五木ひろし)

B8 与作 (北島三郎) 🅱

B9 カメレオン・アーミー (ピンク・レディー) 

 

演奏: クリスタル・サウンズ

編曲: 無記名

定価: 1,800円

 

73年に初めてレコード上に登場したソニーの歌無歌謡アンサンブル、クリスタル・サウンズ。80年代に入ってもクリスタル・サウンズ・オーケストラ名義で継続し、カラオケ・レコードに活動の軸をシフトしてもなお、定期的に歌のない歌謡曲のレコードを発売し続けた(83年からは「CBSソニー・グランドオーケストラ」名義に統一)。この団体のレコード、特に75年以前のものには外れがない。その魅力については、今後チャンスがあればじっくり語っていきたいと思うが、その頃と同種の制作ポリシーは、79年にリリースされたこのアルバムでも健在。唯一、収録曲数が20曲から18曲に減っているのが主だった相違点だが、これは一曲の演奏時間が全体的に長くなったことに起因する。何せ、カラオケが本流となった分、可能な限り原曲に近づけた構成を重視するのは必然であり、そのため片面の演奏時間が35分越えという、通常では考えられない状態に到達してしまうのである。故に、音質的劣化は避けられないところ(まさか、3年後に控えるCDの発売開始を予期していたわけはあるまい)。

カラオケに対応しているとはいえ、「カラオケレコード」を打ち出していないこのシリーズでは、従来通り多彩な音色によって主旋律が奏でられ、軽音楽としての機能を果たしているが、個人的にはこの時期の曲を聴くとまず、何よりも先に唱和せずにいられない(汗)。あの、「ザ・ベストテン」初期の熱気が蘇る選曲。アレンジや曲構成がオリジナルにほぼ忠実ゆえ、それが避けられないのだ。ポップスやニューミュージックと「夢追い酒」「花街の母」が並列で聴けるのも、この流れならでは。場末感により統一された1979年初頭の熱気そのものだ。B面では殆どの曲でフルートが活躍。特に「与作」にさりげなく色を添える洗練感は、『演歌大全集』みたいなアルバムでは聴けない貴重なものだ。職人芸的世界から距離を置いた「無色」感覚こそ、クリスタル・サウンズの最大の魅力である。

 

なお、今日のエントリーで初めて🅱マークが登場している。これは、「与作」を収録したアルバムを3日のエントリーで既に紹介しているためで、今後別ヴァージョンが登場する度、それが何種類目の紹介に当たるかを白抜きアルファベットで表示することとする。また、既に紹介したのと同じヴァージョンが再度登場した場合は、白抜きアルファベットマークに添える形で、そのヴァージョンがどのエントリーで初出したか誘導することとする(無印の場合は🅰とする)。