黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は酒井和歌子さんの誕生日なので

コロムビア ALS-4340

ゴールデン・ヒット・メロディー 第4集

発売: 1968年4月

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ジャケット



A1 ゆうべの秘密 (小川知子)

A2 涙のかわくまで (西田佐知子)

A3 涙をおふき (布施明)

A4 むらさきの夜明け (美空ひばり)

A5 恋のしずく (伊東ゆかり)

A6 こころの虹 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)

A7 ケメ子の唄 (ザ・ダーツ)

A8 大都会の恋人たち (江夏圭介・酒井和歌子)

B1 亜麻色の髪の乙女 (ヴィレッジ・シンガーズ)

B2 恋のオフェリア (ザ・ピーナッツ)

B3 くちなしのバラード (舟木一夫)

B4 乙女の祈り (黛ジュン)

B5 星になりたい (佐良直美)

B6 君だけに愛を (ザ・タイガース)

B7 幻のアマリリア (加山雄三)

B8 残雪 (舟木一夫)

 

演奏: 稲垣次郎 (テナー・サックス)、横内章次 (ギター)/ゴールデン・スターズ

編曲: 大西修

定価: 1,500円

 

日本最老舗のレコード会社コロムビアは、専属作曲家制度に支配された時代から、豊富なレパートリーを武器に自社ヒット曲の歌無歌謡化に積極的に取組み、「涙の太陽」でその枠を取っ払うや否や、他社作品を積極的に取り込み始めるのであった。こうしてスタートした「ゴールデン・ヒット・メロディー」シリーズの第4作目。勢力を拡大するGSブームを睨んで、全編にダンサブルなビート感を導入。若い社交場の雰囲気作りに対応したサウンド作りが、今となってはたまらない場末感を醸し出している。オルガンの侘しい音色、控えめなドラムの存在感、そして何よりもリードをとるサックスにかまされた深いリヴァーブが、その場末感の「素」を形成しているのだ。思えばこの3ヶ月前、コロムビアはあのスナッキーで踊ろうを世に送ろうとしており、本盤のエコーも同じチェンバーで作られたものに違いない。さすがにあそこまでの「深情け」ではないけれど。以下、聴きどころ。

当時の女性歌手の曲の中ではGSの影響が濃く出たものの一つ「涙のかわくまで」ダンスホール対応感は伝わってくるけれど、どこかもたつき感があるのはウッドベースのせいか。2番ではここぞとばかり、アドリブで暴れ回るサックスが聴ける。「ケメ子の唄」はアングラ色を拭い去り、有名オールディーズ曲のエッセンスを加えてドリーミーなバラードへと転じた解釈。「大都会の恋人たち」は自社曲のくせに「大都会の恋人」と誤表記されていて、何やってるのやら。この盤では最も若者色が薄い曲になってしまっている。

最早これの収録曲の中では最も知られた1曲となった感のある亜麻色の髪の乙女は特に新鮮味もない解釈であるが、歌のない平成ヒット集に組み入れると凄いことになるかも(笑)。疾走感溢れる「恋のオフェリア」や幻想的な「星になりたい」は、逆に曲そのものの再評価に繋がってもいい名演。「君だけに愛を」はあらゆる楽器総出で賑々しいムード満点だが、サックスが埋もれてしまったようなミックスが惜しい。カラフルな演出術を手に入れる前の「夜明け感」が滲み出た1枚。