黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は松崎由治さん(ザ・テンプターズ)の誕生日なので

ユニオン UPS-5211-J

知らなかったの/シンギング・サウンド

発売: 1969年5月

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ジャケット



A1 知らなかったの (伊東ゆかり)

A2 みずいろの世界 (じゅん&ネネ)

A3 長崎は今日も雨だった (内山田洋とクール・ファイブ) 

A4 年上の女 (森進一)

A5 港町・涙町・別れ町 (石原裕次郎)

A6 初恋のひと (小川知子)

A7 ブルー・ライト・ヨコハマ (いしだあゆみ) 

B1 風 (はしだのりひことシューベルツ)

B2 華麗なる誘惑 (布施明)

B3 そよ風のバラード (ザ・スウィング・ウエスト)

B4 君は心の妻だから (鶴岡雅義と東京ロマンチカ)

B5 純愛 (ザ・テンプターズ)

B6 私にだって (矢吹健)

B7 スワンの涙 (オックス)

 

演奏: ユニオン・シンギング・オーケストラ

編曲: 中山順一郎、河屋薫

定価: 1,700円

 

文字を一切入れず、直線的にポートレイトをあしらったジャケットが印象的な「シンギング・サウンド」シリーズの1枚。テイチクの本流歌無歌謡に比べると洗練されたというか、小気味良い演奏が楽しめる、それでいてなおも場末色を失っていない好アルバム。今作においては、今となってはその影響力が軽視されたと思える、米国の名門ビリー・ヴォーン楽団の影響が色濃いブラス・アンサンブルを中心としたサウンドを聴かせてくれる。

1曲目「知らなかったの」は実は宗内が「全歌謡曲の中で一番好き」と公言するイントロで始まるのだが、ここでは当然そのマジカルさが相当縮小されている。こぢんまりはしているものの、音の厚みは相当なもので、ヴォーン的な和音の付け方はオリジナルから離脱した世界。アルバムA面はこのようにドメスティック色濃いメロディーを、洒落た和音構成で洋楽的に味付ける手法を基本に展開していく。リズムセクションがシンプルな分、ここまでノリの軽い長崎は今日も雨だったは稀かも。「ブルー・ライト・ヨコハマ」は一切のエレガンスを車窓から投げ捨て、軽エンジンで飛ばしに飛ばしている印象。

B面にはGSやフォーク曲がいくつか含まれているが、そちらにはある程度泥臭い解釈を加え、ドメスティックな曲といいバランスをとっている。「そよ風のバラード」は自社曲ながら、選曲そのものが貴重。「純愛」にはほんの少しながらサイケのニュアンスも。この2曲の間にさりげなく「君は心の妻だから」が挟まっていても、全く違和感がない。藤本卓也メロディー「私にだって」はさすがに超軽量な解釈。ダンスホールで小さな埴輪と戯れる如きスワンの涙で一件落着。コンパクトで心躍る1枚。