黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は河島英五さんの誕生日なので

ユピテル YL-2109~10 

夜の盛り場演歌全曲集

発売: 1978年

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ジャケット



A1 あしたも小雨 (五木ひろし) 🅱

A2 哀歌 (八代亜紀)

A3 私の名前が変わります (小林旭)

A4 お店ばなし (増位山太志郎) 🅱

A5 そんな女のひとりごと (増位山太志郎) 🅱

A6 花街の母 (金田たつえ) 🅱

A7 旅の終りに (冠二郎)

A8 津軽海峡冬景色 (石川さゆり)

B1 北国の春 (千昌夫) 🅱

B2 時には娼婦のように (黒沢年男) 🅱

B3 ウナ・セラ・ディ東京 (ザ・ピーナッツ)

B4 兄弟仁義 (北島三郎)

B5 わたし祈ってます (敏いとうとハッピー&ブルー) 🅰→4/9

B6 ほおずき (渡哲也)

B7 おゆき (内藤国雄)

B8 君こそ我が命 (水原弘)

C1 夢追い酒 (渥美二郎) 🅱

C2 そんな夕子に惚れました (増位山大志郎)

C3 すきま風 (杉良太郎)

C4 カスマプゲ (李成愛)

C5 黒い花びら (水原弘)

C6 もう一度一から出なおします (小林旭)

C7 くちなしの花 (渡哲也) 🅱

C8 長崎は今日も雨だった (内山田洋とクール・ファイブ) 🅱

D1 熱海の夜 (箱崎晋一郎)

D2 円山・花町・母の町 (三善英史)

D3 ラブユー東京 (黒沢明ロス・プリモス)

D4 ひとり (渡哲也)

D5 コモエスタ赤坂 (ロス・インディオス)

D6 暖流 (石川さゆり)

D7 酒と泪と男と女 (河島英五)

D8 愛ひとすじ (八代亜紀)

 

演奏: ユピテル・グランド・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 2,500円

 

フォーク歌手として名を成した故・河島英五さんの誕生日なのに、唐突にど演歌のコンピ。逆説的スタンスに入ってしまうのも宗内の悪いところなんです…と言いつつ、安い飲み屋モードに切り替え、このレコードに耳を傾ける。しみじみ聴ける、そんな世代になってしまいました…と言えども、リアルタイムで親しんだ曲もいくつも入っていて、パンクだニューウェイブだと意固地になっていた中学生の頃の自分の素直な部分がフィードバックしてくるんです。いくら演歌と言えども、流行り歌として耳に入れ、時々口をついて出てきたりしてましたからね。当時の最新ヒット曲に限らず、10数年前に至るスタンダード曲も織り交ぜ、手堅く聴かせる。さすがに豊富に歌無歌謡音源のリリースを積み重ねてきたユピテルだけあって、全ての曲が最新録音で統一されているわけではなく、「わたし祈ってます」は4月9日紹介の通称『ポストアルバム』に収録されていたのと同じテイク(演奏者名義は違うが、よくあることさ)だが、それほど違和感を感じさせない。どうせならメロトロン全開の「襟裳岬」も入れて欲しかったところだが、何故か森進一の曲はここには選曲されていない。

それぞれの曲の聴きどころを探すのは野暮ったいけれど、津軽海峡冬景色」は場末感が強い割にエンディングの盛り上げ方が尋常でなかったり、「君こそ我が命」はツウィン・ギターズ的演奏の割に好夫ギター全開(他の曲にも明らかに好夫ギターがフィーチャーされているものがあるが、個別クレジットは一切無し)で、おまけに低音鍵ハモにトレモロをかけてたり、「ほおずき」の飲み屋のねーちゃん達のような女性コーラスなど、時折ハッとさせる瞬間が訪れる。そして、やっぱ酒と泪と男と女は唱和してしまいます…殆ど縁のないライフスタイルを送ってきたけれどね…(汗)。こんな「夜の盛り場」が廃墟と化した今だからこそ、染みるアルバムです。ジャケットは矛盾してるが…