アトランティック QL-6064A
華麗なるミラクルギター・ベストヒット20 虹をわたって/夜汽車の女
発売: 1972年9月
A1 虹をわたって (天地真理)
A2 京のにわか雨 (小柳ルミ子)
A3 夜汽車 (欧陽菲菲)
A4 朝まで待って (朝丘雪路)
A5 旅路の果てに (森進一)
A6 こころの炎燃やしただけで (尾崎紀世彦)
A7 どうにもとまらない (山本リンダ)
A8 恋唄 (内山田洋とクール・ファイブ)
A9 途はひとつ (黛ジュン)
B1 夜汽車の女 (五木ひろし)
B2 哀愁のページ (南沙織)
B3 旅の宿 (吉田拓郎)
B4 花は流れて (藤圭子)
B5 芽ばえ (麻丘めぐみ)
B6 夢ならさめて (にしきのあきら)
B7 ひとりじゃないの (天地真理) 🅲
B8 純潔 (南沙織) 🅲
B9 あなただけでいい (沢田研二)
B10 BABY (平田隆夫とセルスターズ)
演奏: ツゥイン・ギターズ/ワーナー・ビートニックス
編曲: 原田良一
制作: 大野良治/ミキサー: 島雄一
備考: SQ方式4チャンネル・レコード
定価: 1,800円
遂にやってきました、我が歌無歌謡愛の核心、ワーナー・ビートニックスについて語る時が!とにかく、あらゆる情報網を駆使して、ワーナーの『華麗なる~』シリーズで71~73年にリリースされた歌無歌謡のアルバム全45作(内11作は2枚組)の曲目含むディスコグラフィーを、なんとか組み上げることができました(他にも『ロック・クリスマス・ロック』など重要作がいくつかありますが)。とにかく、このシリーズには一貫した美学があります。窓開き仕様を採用した1枚もののジャケットはその象徴。今所持している音盤は残念ながら、その全てではないけれど、いくつも重要作があるので、機会を得る度にじっくり語っていきたいと思います。
今日紹介するのは、「ツゥイン・ギターズ」名義で出された3作目にあたるもので、1972年のヒット曲をずらり20曲フィーチャー。片面に10曲も突っ込んでいるのに、アレンジをコンパクトにまとめ、1曲あたりの演奏時間を2分台に抑えているおかげで、適度にダイナミックレンジを保持しているところがワーナー最大の魅力。原曲に忠実によりも、いかに独自のカラーを加えるか、それに於いてこのシリーズは圧勝だと思います。そしてこちらは、ソニーが提唱したSQ方式を採用した4チャンネルミックス。通常のステレオとの互換性が高いため、最も普及した方式となったが、何故か後期のリリースではRM方式に鞍替え。同じQL規格を品番に採用してるので、実にややこしい。
さて「ツゥイン・ギターズ」の魅力は、文字通り独自に編み上げられたギターアンサンブル。それこそ、3本以上のギターでないと再現できない演奏もあるが、単にギタリストが二人いるのでこの名義になったと思われます…詳しい話はいつか、当事者に伺いたいということで(汗)、その魅力は1曲目「虹をわたって」から全開。両サイドから畳み掛けるギターのカスケイド、軽やかに支えるチェンバロやヴァイブ、地味に自己主張するベース(Bメロでは4拍目と6拍目を強調した「ミレニウムベース」が!)など、やっつけ仕事ではあり得ない繊細なサウンドが、四方から押し寄せる(当然、脳内でデコードしています)。「京のにわか雨」は繊細に8分音符を刻むギターに、マイルドなディストーション気味でメロディが乗る。「どうにもとまらない」はオリジナルと一味違う疾走感が溢れ出たロッキンな解釈。いずれも独自の和声感覚がユニークな個性になっており、これこそが「ツゥイン・ギターズ」の決め手である。
B面トップはグルーヴ演歌として再評価の著しい「夜汽車の女」。勢いが止まらなかった五木さんの新曲だからこそ、歌無歌謡解釈も多岐に及んでおりそれぞれに楽しめる。ここではハーモニーも控えめにハードにロックしているが、同じワーナー・ビートニックス名義でもドラムを主役に据えたヴァージョンはより過激な出来になっており、同一名義で聴き比べができるのもこのシリーズの醍醐味(時々音源使い回しもあるのだが)。この辺も今後の音盤語りの課題にしたいところ。続く「哀愁のページ」との温度差もまた格別で、ここでのギターのハーモニーは脇役に徹している。さわやかに加速してみせた「芽ばえ」、一瞬「銀色のグラス」かと思えてしまう、ベースも派手に暴れ回る「夢ならさめて」など、他にも聴きどころ満載。ギターの美学を多角的に伝えてくれる好アルバムだ。