黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日はマリア (ゴールデン・ハーフ)の誕生日なので

アトランティック QL-6061A 

華麗なるビート・オルガン・ベストヒット20 京のにわか雨/芽ばえ

発売: 1972年8月

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ジャケット



A1 京のにわか雨 (小柳ルミ子) 🅱

A2 夜汽車 (欧陽菲菲) 🅱

A3 BABY (平田隆夫とセルスターズ)

A4 風の日のバラード (渚ゆう子)

A5 あなただけでいい (沢田研二) 🅱

A6 小麦色の少年 (原美登利)

A7 太陽の彼方 (ゴールデン・ハーフ) 🅱

A8 まるで飛べない小鳥のように (いしだあゆみ)

A9 運がよければいいことあるさ (堺正章)

A10 そして今は (ペドロ&カプリシャス)

B1 芽ばえ (麻丘めぐみ) 🅱

B2 夏の夜のサンバ (和田アキ子) 

B3 恋唄 (内山田洋とクール・ファイブ) 🅱

B4 心の痛み (朱里エイコ)

B5 ひとりじゃないの (天地真理) 🅳

B6 青い日曜日 (野口五郎)

B7 ゴッドファーザー愛のテーマ (尾崎紀世彦) 🅲

B8 純潔 (南沙織) 🅳

B9 ハッチャキダンス (堺正章)

B10 ビビビのビ (高橋基子)

 

演奏: 栗林稔 (ハモンド・オルガン)/ワーナー・ビートニックス

編曲: 竜崎孝路、原田良一(A2のみ)

制作: 大野良二/ミキサー: 島雄一

備考: SQ方式4チャンネル・レコード

定価: 1,800円

 

ワーナーの「華麗なる~」シリーズの中で、異色楽器セレクションとしてそれぞれ1枚のみ出されたのが、ハーモニカ、ベースとこのオルガンものだ。まったりとしたエレクトーンもののパブリックイメージと一線を画すように、派手なロックサウンドにフィーチャーされた分厚いハモンドの響きが売りで、ワーナーの意地を感じさせる。ドラム、ギターも突っ走っているが、それ以上に各種パーカッションが緊張感を与え、特にサンタナからの影響をこれらの歌謡ヒット曲に投影させている。その派手さをより盛り上げる4チャンネルミックス。一曲目「京のにわか雨」からして、スティーリー・ダン「ドゥ・イット・アゲイン」の影が濃厚…と書いた矢先、同曲の米国での発売は72年11月と、このレコードより3ヶ月後であることに気付くなど。恐るべし、ワーナー・ビートニックス!チェイスを彷彿とさせるブラス入り「夜汽車」の鮮やかさも見事。この曲のみ、チーフ・ビートニク(?)である原田良一氏のアレンジ。他の曲を手掛けた竜崎氏も、同時期にモーグのレコードを発表しているだけあり、センスのいい仕事ぶりだ。

聴きどころはそれこそいっぱい。このレコードで聴いて、改めて名曲であることを認識させてくれた筒美作品「風の日のバラード」。脇役のフルートも爽やかに盛り上げる。ワーナーがポストルミ子として期待を賭けた原美登利「小麦色の少年」はプッシュの意味を込めた選曲だが、熱い演奏はオリジナルの爽やかさを見事に打ち砕く。同じくオリジナルからかけ離れたグルーヴィなロックに化している「芽ばえ」和田アキ子の曲の中でもカルト受けが高い「夏の夜のサンバ」は更なる狂乱グルーヴィ演奏で盛り上げ、「ひとりじゃないの」はさわやかにかつ激しく。ラスト2曲に異色曲を固めているが、どちらもノリ重視で全体に溶け込んでいる。後者にはさすがにサイケ色が残っているが。四方から熱いサウンドが押し寄せてくるパーティ向きの1枚。音録りの総責任を担った島雄一氏(ザ・ワイルド・ワンズ島英二氏の兄)の功績も見過ごせません!

 

ハモンドは厳密には「電子オルガン」ではありませんが、便宜上そこに含むことにしました。