黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1972年、今日の1位は「瀬戸の花嫁」(2週目)

エルム KL-1205

日本歌謡全集❺ 瀬戸の花嫁喝采

発売: 1972年

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ジャケット



A1 瀬戸の花嫁 (小柳ルミ子) 🅳

A2 同級生 (森昌子)

A3 あなたの灯 (五木ひろし)

A4 哀愁のページ (南沙織) 🅱

A5 よこはま・たそがれ (五木ひろし) 🅳

A6 京のにわか雨 (小柳ルミ子) 🅲

B1 喝采 (ちあきなおみ)

B2 女のみち (宮史郎とぴんからトリオ) 🅲

B3 放浪船 (森進一)

B4 せんせい (森昌子)

B5 水色の恋 (天地真理) 🅱

B6 わたしの城下町 (小柳ルミ子) 🅲

 

演奏: ジャパン・シンフォニー・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 1,200円

 

一番対応に困ってしまうマイナー・レーベルもの。元々、ミュージックブックなどを発売し、非レコード店販売ルートでの展開に強みを持っていたエルムではあるけれど、どのあたりのユーザー層を狙ってこの辺の演奏レコードを市場に投げかけてきたかが、全く読めない。最低限の雰囲気作りに音楽があればいいって層は、当時既にある程度あったのだろうけど。今に当てはめれば、生活の全てを100均で賄える人達みたいな。長距離ドライバーという強力な支持層がいたテープ市場ならまだ解るとして。

我が手元に迷い込んできたこの盤は、呆れるほど状態がよくない。ジャンクヤードから救済した盤であろうが、下北沢の「あの店」で売られている「神洗浄」キットを使うとある程度甦りはするのだが、この盤は言うことを聞いてくれなかった。それなりに語り甲斐はあるのに、長い年月に渡って時代の空気に晒された故の出音の劣化が、我が聴覚に忠実に届くことを許さない。どんな人たちがこのレコードをそこまで追いやったのだろうか…それでも、なんとか聴いてみる。

瀬戸の花嫁。「シンフォニー・オーケストラ」の名からは想像し難い、ものすごく場末的なアンサンブルで、妙なオルガンの音がメジャーものにない風味を醸し出している。「同級生」もせこい演奏ながら、Bメロでベースが暴れ始め、ただものではない予感。「あなたの灯」は主旋律が琴による演奏。ガチなプレイヤーが関わってるのだろうか。「哀愁のページ」…ズルッ。この曲にはその言葉しか浴びせることができない。やっぱ、筒美京平作品になると、場末の1.5流以下プレイヤーごときじゃ太刀打ちできないんだろうな。せこいを通り越して、場末の歌謡ポーツマスシンフォニアとしか形容できない演奏へと陥れられているし、盤質の悪さがさらにそのムードを助長する。

残りの曲、特にB面に行くと盤のダメージもA面ほどではないので、そこまで深刻にならず聴き流せるし、喝采なんて必要以上にベースが自己主張していて悪くはないのだけど、やっぱ「パチソン」を見つけて騒いでる人達が何に魅せられているかを逆説的に知らされる1枚。だからこそ、マイナーものはやめられません。むしろ自分にとっては、こっちの方が長年本流でしたから(汗)。