東芝 TP-60034
豊岡豊とスイング・フェイス 当世当り唄決定盤
発売: 1975年
A1 私鉄沿線 (野口五郎) 🅱
A2 はじめての出来事 (桜田淳子)
A3 華麗なうわさ (フィンガー5)
A4 木枯しの二人 (伊藤咲子)
A5 わるい誘惑 (郷ひろみ)
A6 女性 (南沙織)
A7 襟裳岬 (森進一) 🅳
B1 湖の決心 (山口百恵) 🅱
B2 愛の迷い子 (アグネス・チャン)
B3 想い出のカフェテラス (浅田美代子)
B4 木枯らしの舗道 (天地真理)
B5 この愛のときめき (西城秀樹) 🅱
B6 スモーキン・ブギ (ダウン・タウン・ブギウギ・バンド) 🅱
B7 二人でお酒を (梓みちよ) 🅲
演奏: 豊岡豊とスイング・フェイス
編曲: 鈴木宏昌
定価: 2,000円
古き良き時代の歌番組の思い出といえば、緊張感溢れる展開の中、生バンドのしっかりした演奏で歌手がちゃんと歌ってる展開に胸がドキドキしたものである。嫌でも歌手に目が行ってしまうけど、スタジオで練りに練られたオケのサウンドの完全再現は無理と解っていつつ、大迫力でそれをカバーしてしまうフルバンドの凄さは、今となっては語るのも難しい。ガチミュージシャンはもっともっと目立つ場での仕事を与えられて然るべきなのだ、時代がどうあろうが。
そんなフルバンドの魅力をそのまま刻み込んだ、しかも歌謡曲に題材を求めたレコードは決して珍しくなく、ダン池田とニューブリードにはあのレギュラー人気番組の「冠レコード」がいくつか残されているほどだが、現在ではあまり語られる機会がなくなってしまったけど、70年代花形バンドの一つだった豊岡豊とスイングフェイスにも有りました、歌無歌謡アルバム。75年当時の最新ヒット曲がズラリ。編曲はコルゲン師匠が気合を入れ、福田一郎先生が渾身のライナーノーツを寄せている。そして、演奏メンバー全員のクレジット入り。
針を落とした瞬間から、並の歌無歌謡アルバムでは味わえないライヴ感と圧倒的なノリが押し寄せてくる。「私鉄沿線」のあのイントロも、大挙ブラス軍団によりゴージャスに生まれ変わっている。リズムセクションもバッチリタイトに録られ、ムーディに魅惑。続く「はじめての出来事」もファンシーさを残しつつ、リズムに重心を置いて一味違う解釈。一瞬ためらいがちにフルートで乱入してくるのは、サックス隊の一人だろうか?「襟裳岬」もこの顔ぶれで聴くと印象が全然違う。過剰にエレガントな「木枯らしの舗道」はこの流れの中だと異色かも。ジャズバンドとしての特性はやはり「スモーキン・ブギ」で全開。しかし「世界禁煙デー」にこの曲が入ってるアルバムを持ち出すのってどうよ…まぁ、「禁煙音頭」でもありますし、その辺はご愛敬ということで。
アイドル曲の仮面を引っ剥がし、ガチなミュージシャンシップを浮き彫りにしてみせた好アルバム。今こんなアルバム作るとしたら、武商吹部のような真のエンタメ性を理解している学生ブラスバンドが、乃木坂46とかの曲をガチでアレンジして完全なる生音で演ってるもの、みたいなのに限られるのかなぁ。聴いてはみたいけれど…
スモーキンしてます(裏ジャケより)