黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は中村八大、猪俣公章両氏を偲んで

RCA JRA-9019~20

豪華盤 全国歌謡 ベスト・ヒット24 

発売: 1970年

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ジャケット



A1 恋ひとすじ (森進一)Ⓐ 🅱

A2 国際線待合室 (青江三奈)Ⓐ 🅱

A3 喧嘩のあとでくちづけを (いしだあゆみ)Ⓐ

A4 白い蝶のサンバ (森山加代子)Ⓐ 🅱

A5 私が死んだら (弘田三枝子)Ⓐ

A6 土曜の夜何かが起きる (黛ジュン)Ⓐ 🅱

B1 女のブルース (藤圭子)Ⓐ 🅱

B2 恋人 (森山良子)Ⓐ 🅲

B3 愛の美学 (ピーター)Ⓐ

B4 白い色は恋人の色 (ベッツイ&クリス)Ⓐ 🅱

B5 朝が来るまえに (ちあきなおみ)Ⓐ

B6 恋人の讃歌 (ピンキーとキラーズ)Ⓐ

C1 逢わずに愛して (内山田洋とクール・ファイブ)Ⓑ 🅱

C2 池袋の夜 (青江三奈)Ⓑ

C3 別れのサンバ (長谷川きよし)Ⓒ 🅱

C4 ひとり寝の子守唄 (加藤登紀子)Ⓑ

C5 人形の家 (弘田三枝子)Ⓑ 🅱

C6 涙をこえて (シング・アウト)

D1 新宿の女 (藤圭子)Ⓑ

D2 花と涙 (森進一)Ⓑ 🅱

D3 とまらない汽車 (中山千夏)Ⓒ

D4 黒ネコのタンゴ (皆川おさむ)Ⓑ

D5 その時私に何が起ったの? (和田アキ子)Ⓑ

D6 第1章: 涙 (三条アンナ)Ⓒ

 

演奏: ポス宮崎とコニー・アイランダースⒶ

矢野あきら (テナー・サックス)Ⓑ

湊たかおとフルート・トリオⒸ

オーケストラ・編曲者表記無し

定価: 3,000円

 

昭和歌謡界に偉大な足跡を残した作曲家二人を失った悲しい日。この二人の曲が揃って収録されている盤というと、時期的に見つけにくいんですね(猪俣氏が飛ぶ鳥落とす勢いを誇っていた頃、八大氏は作曲家としては低迷期に入っていたし)。でも、辛うじてありました。70年を飾ったヒット曲がいっぱい。複数の盤から寄せ集められて限定発売されたもので、アレンジャークレジットがないのが残念。もっとも、オーケストラのクレジットがないのは、RCAの盤にはよくあることで。

前半はトップハワイアンバンドの1角を成していたポス宮崎とコニー・アイランダーが小粋に聴かせる。と言っても、ガチなハワイアン色はそれほどなく、ヴァイブやフルートが程よい色付けで活躍する。冒頭の2曲を始め数曲が、5月7日取り上げた柴田晴代のアルバムにも入っているが、彼女の演奏に比べてもまだ軽妙な印象で、脇役を固める楽器の効果が出たという感じ。ウクレレも一応入っているが、「恋人」で前面に出てくる位でそこまで目立っていない。「土曜の夜何かが起きる」も、普通にグルーヴィだ。B面に並ぶ「恋人」三部作でも爽やかに盛り上げるスチールの音色、もっとロマンティックに語られていいと思います(最早ハワイにそんなイメージ求められてないんかな…)。フルートも、ガチな奏者の演奏という感があまりなく、そこに好感が。ハワイアンに使われるイメージがあまりないので、恐らくヘルプ要員のプレイではないかという気がする…

後半はRCA名物・矢野あきらのサックスの合間に、フルート・トリオが色を添える。小粋にまとまった演奏に、それぞれが別の色を持った3本のフルートが絡み合い、独特のサウンドを作り上げている。この高貴感は、歌無歌謡ではなかなか出会えないものです。シング・アウトのピースフルな古典曲「涙をこえて」も初々しさが前面に出て、まさに勇気凛々なヴァージョン。よく聴くとクラリネットが入って四重奏になっている。笛吹きは沢山集まれば集まるほどいいものです(汗)。矢野あきら曲には他の2組に配慮してか、フルートの使用はないが、相変わらずの熱い演奏。特に「人形の家」がドラムと重なり合いパワフルに炸裂した演奏だ。