黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は金井克子さんの誕生日なので

テイチク SL-1395 

ニュー・ヒット歌謡 十五夜の君

発売: 1973年10月

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ジャケット



A1 十五夜の君 (小柳ルミ子) 🅲

A2 白樺日記 (森昌子) 🅲

A3 色づく街 (南沙織) 🅲

A4 胸いっぱいの悲しみ (沢田研二) 🅲

A5 ふるさと (五木ひろし) 🅲

A6 夜間飛行 (ちあきなおみ)

A7 他人の関係 (金井克子)

B1 おんなの涙 (八代亜紀) 🅱

B2 ひとりっ子甘えっ子 (浅田美代子) 🅱

B3 草原の輝き (アグネス・チャン) 🅳

B4 恋は燃えている (欧陽菲菲) 🅲

B5 絹の靴下 (夏木マリ) 🅲

B6 街の灯り (堺正章) 🅱

B7 なみだ恋 (八代亜紀) 🅳

 

演奏: 木村好夫 (ギター)/テイチク・オーケストラ

編曲: 栗田俊夫、福島正二 (B1, B7)

定価: 1,500円

 

70年あたりから発売ペースを慎重に保ちつつ、実験サウンド路線を傘下のユニオン含めて貫いていたテイチクも、73年になるといきなりトーンダウン。石油ショックへの初期反応でもあったのか、制作姿勢的に一気に保守方向へと向かって行く。その反動が、75年以降カラオケレコードの大乱発に表れるというわけだが。そういえば、看板アレンジャーだった山倉たかし氏も、メインである通常歌謡仕事はこの頃にはめっきり減っていたような。その分、劇伴などで本領を発揮し始めるのだが。

73年1月から9月にかけて、1枚も歌無歌謡の新作アルバムが出ていなかったテイチクがやっとのことで送り出した、73年後半のヒットセレクション。バックのアンサンブルもどっちかというと地味で手堅く、そこにいつものようにマイペースの好夫ギターが乗る。この時期の曲はやたら派手なアレンジをされたり、メロトロンやら妙な楽器が使われるケースも増えているので、この淡白さに寧ろ風情を感じる。「ふるさと」にしても、好夫ギターのエモさが全てという感じで、ミノルフォン盤のような意外なスリルはない。こういう、単に流してみましたみたいなアレンジにも充分耐え得る当時の歌謡メロディーの強さを、改めて思い知らされる。「他人の関係」辺りは比較的力が入った演奏になっているが、この曲を山倉氏が手掛けたらどうなるかという妄想に結局走ってしまうのだ。当時のテイチクのトッププライオリティだった八代亜紀の2曲は、違うアレンジャーを起用しているためか明らかに他の曲と質感が違い、ガチなバックアップ姿勢が感じられる。

恒例の「ひとりっ子甘えっ子」。この曲にいつもの調子の好夫ギターは相当のアンバランスだが、淡々とした雰囲気は悪くはない。2コーラス目はピアノとヴァイブをフィーチャーして、どちらかというとエレガントな感じに。この曲に関しては今後も贔屓目を崩さず、めちゃ語らせていただきます(4/1参照)。B面中盤の疾走感に満ちた展開も侘しさが加わり、他社とかなり質感が異なる。そして、やはり「夜間飛行」は名曲だなぁ。歌無ヴァージョンも出来がいいと、言葉の力なしでもしっかり語り尽くしてしまう。今作のは、当然「合格」です。