黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は北山修さんの誕生日なので

東芝 TSD-10 

くやしいけれど幸せよ

発売: 1970年

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ジャケット



A1 くやしいけれど幸せよ (奥村チヨ)

A2 恋ひとすじ (森進一) 🅲

A3 国際線待合室 (青江三奈) 🅲

A4 あなたならどうする (いしだあゆみ) 🅱

A5 思いがけない別れ (小川知子)

A6 恋人 (森山良子) 🅳

A7 逢わずに愛して (内山田洋とクール・ファイブ) 🅲

B1 ドリフのほんとにほんとにご苦労さん (ザ・ドリフターズ)

B2 白い鳥にのって (はしだのりひことシューベルツ)

B3 白い蝶のサンバ (森山加代子) 🅲

B4 悲しみは女だけに (浅丘ルリ子)

B5 愛の美学 (ピーター) 🅱

B6 花のように (ベッツイ&クリス) 🅱

B7 女のブルース (藤圭子) 🅲

 

演奏: ゴールデン・サウンズ

編曲: 荒木圭男

定価: 1,000円

 

ニック・ドレイクの誕生日でもある今日ですが、めげずに幸せモードに入りたいというわけで、ゴールデン・サウンズの王道アルバムを。当初、見慣れない規格だし、特販ルートで出たアルバムと思ってたのですが、実は東芝音楽工業(当時)設立10周年記念アルバムとして限定発売された故のイレギュラー品番で、しかもこの曲数で1000円という破格サービス盤。相当売れたようで、他のゴールデン・サウンズ盤に比べると遥かに見つけやすい(ジャケットもゴールデンの基準からすればマイルドな感じだし)。

サウンド的にもいつものあの感じで付き合いやすく、激動の時代に潜む安堵感が伝わってくる。筒美京平作の2曲はいずれもドメスティック感覚に溢れたもので、マイルドなお色気を失わずインスト化に成功しているし、「恋ひとすじ」「国際線待合室」もそれなりに歌無王道な解釈。後者にはやはり、「こんなにこんなに愛してる」と同じ作者コンビの作品なんだなと再認識させられる…(汗)。

黛ジュンの「土曜の夜何かが起きる」と並び、歌無歌謡にこの曲の悪いヴァージョンはないと改めて思わされている名曲が、小川知子「思いがけない別れ」である。本人の歌を聴いてるだけじゃ、そんな事決して思わないんだけどな…(まぁ仕方ない、この人の場合は特に)。この盤は当然御本人所属メーカーだけあり、気合入った演奏で、蔑ろにされがちなA’メロ後半のコードチェンジもちゃんとやっている(それを怠ったヴァージョンさえ上出来だったりするから、不思議なものだ)。「白い蝶のサンバ」は「古巣のリベンジ」ながら忠実に、手堅く聴かせている。「白い鳥にのって」「花のように」と、過渡期の作品にあたる2曲が(歌詞なしですが)取り上げられている北山修先生の更なる長寿を祈りつつ、明日につなげましょう。