黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は本田孝さんの誕生日なので

クラウン GW-8071~2 

昭和おんなブルース 魅惑のヒット歌謡32集 

発売: 1970年12月

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ジャケット



A1 銀座の女 (森進一)Ⓐ

A2 何があなたをそうさせた (いしだあゆみ)Ⓐ

A3 昭和おんなブルース (青江三奈)Ⓑ 🅱

A4 嘘でもいいから (奥村チヨ)Ⓐ

A5 むらさき日記 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)Ⓑ

A6 X+Y=LOVE (ちあきなおみ)Ⓓ

A7 シャンゼリゼの夜 (ピーター)Ⓑ

A8 情熱 (西郷輝彦)Ⓒ

B1 愛のいたずら (内山田洋とクール・ファイブ)Ⓐ

B2 さすらい (伊東ゆかり)Ⓑ

B3 愛のきずな (安倍律子)Ⓐ 🅱

B4 恋のぬくもり (小川知子)Ⓑ

B5 チュクチュク (ジミー・オズモンド)Ⓓ

B6 真夏のあらし (西郷輝彦)Ⓐ

B7 雪国の女 (本田孝)

B8 京都の恋 (渚ゆう子)Ⓒ 🅲

C1 命預けます (藤圭子)Ⓐ

C2 手紙 (由紀さおり)Ⓐ

C3 愛があるなら年の差なんて (にしきのあきら)Ⓑ

C4 私生活 (辺見マリ)Ⓒ

C5 男と女のお話 (日吉ミミ)Ⓐ

C6 そっとおやすみ (布施明)Ⓓ

C7 時は流れる (黛ジュン)Ⓔ

C8 愛のフィナーレ (菅原洋一)Ⓐ

D1 希望 (岸洋子)Ⓐ 🅱

D2 噂の女 (内山田洋とクール・ファイブ)Ⓑ 🅱

D3 僕の中の君 (ベッツイ&クリス)Ⓐ

D4 ロダンの肖像 (弘田三枝子)Ⓒ

D5 初恋の人に似ている (トワ・エ・モア)Ⓑ 🅱

D6 三日月に乗って (中山千夏)Ⓓ

D7 走れコウタロー (ソルティー・シュガー)Ⓔ 🅱

D8 愛は傷つきやすく (ヒデとロザンナ)Ⓐ

 

演奏: まぶち・ゆうじろう’68オールスターズⒶ

いとう敏郎と’68オールスターズⒷ

ありたしんたろうとニュービートⒸ

川原パーカッション・ブラザーズⒹ

いいよしかおると’68オールスターズⒺ

編曲: 福山峯夫、馬飼野俊一

定価: 2,400円

 

海外の偉大なミュージシャン誕生記念週間が、ここ黄昏みゅうぢっくでは「クラウンを讃える週間」となってしまいました(20日も本来の予定ではクラウンのアルバムがプログラムされていました)…とにかくクラウンのネタが無意識に増えすぎたので、他社に比べて出てくる頻度が高いのはしょうがないですが、発売総点数に対するとこれでもごく一部。何せ、カタログに載る期間も短いから、発売スケジュールを完全に把握するのも不可能に近いし、ヴァージョンの重複も必至。細かいミックス違いとか長さ違いまで研究し出すと、キリがありません。素直に流して楽しむしかない。

70年後半を飾ったヒット曲がずらりの2枚組。32曲ぎっしり入ってますが、その殆どに大ヒットというイメージがあります。これが3ヶ月前だとまたガラッと変わるし、濃厚な時代でしたね。歌無歌謡アルバムが乱発されても、別に不思議な時代じゃなかった。それらを、いつものクラウン黄金メンバーに加え、ちょっと変わり種のメンツの演奏も交えて手堅くまとめています。主役の’68オールスターズはいつも通り派手すぎず盛大すぎず、適度にムードを効かせた演奏で、整備したての高速道路を飛ばす車の中で鳴り響いているイメージ。当ブログ初登場となる川原パーカッション・ブラザーズは、随所で引っ張りだこだったパーカッション奏者、川原正美氏を中心とするユニット。基本はラウンジ系のコンパクトなコンボ演奏ながら、フルートやピアノの演奏に洗練された感覚が出て、主役オールスターズの場末的演奏に程よいアクセントを加えています。曲の選択も絶妙。大名曲「そっとおやすみ」(オリコン最高48位とはむしろ意外)もオリジナルと一味違う解釈でなかなかはまってます。「三日月に乗って」のフルートもめちゃ艶っぽい。ありたしんたろうとニュービートは、73年の演奏を聴いた後だと、走りすぎるドラムが場末感を引っ張れていない印象。収録比率が少ないので、かえって存在感は出ていますが。名人・飯吉馨氏は電気チェンバロを奏でて2曲にフィーチャー。走れコウタローのノヴェルティ感覚を鍵盤で出すのは不釣り合いっぽいけど、なかなか上手くこなしています。エンディングでテープ回転を早めるなんてトリックは、さすがに普通の歌無歌謡レコードではしてませんけどね。

ちなみに今日誕生日の本田孝は、乗りに乗るRCAが当時14歳という若さを売りに推し出した新人演歌歌手。デビュー曲「雪国の女」は期待された割に、オリコン79位とふるわず。このように、他社の期待の新人をさりげなく推すのもクラウンの懐の広さだったんですね。歌謡史的には今日は寧ろ南野陽子の誕生日ですが…「話しかけたかった」あたりはラブリーなリコーダーが似合う名歌無歌謡になり得ると思うんですけどね。

 

さて、魅力的な顔ドアップジャケットを開くと、まさかの予期せぬ事態が…ジミー坊やの「チュクチュク」なんてのも入ってるし、一家団欒のBGMにもいいかなとこれを買ってきたお父さんにその後、とんでもないダメージが降りかかるなんてことが当時頻出したのでしょうか。もっとも、ジャンクコーナーに出回ってるこの手のピンナップ付き盤は、大抵そこが切り取られてるケースが多いのですが。まぁ、表ジャケットがこれなので、安心して買うことはできますね(汗)。