黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は琵琶湖の日、ですって…

アトランティック QL-6065A 

華麗なるヒット・バラエティー・ベスト20 京のにわか雨・虹をわたって

発売: 1972年9月

f:id:knowledgetheporcupine:20210630063456j:plain

ジャケット



A1 京のにわか雨 (小柳ルミ子)Ⓐ 🅴

A2 虹をわたって (天地真理)Ⓑ 🅲

A3 夜汽車の女 (五木ひろし)Ⓑ 🅱

A4 旅路の果てに (森進一)Ⓐ 🅰→4/25

A5 折鶴 (千葉紘子)Ⓒ

A6 こころの炎燃やしただけで (尾崎紀世彦)Ⓐ 🅰→4/25

A7 夢ならさめて (にしきのあきら)Ⓐ 🅰→4/25

A8 合言葉 (伊丹幸雄)Ⓑ

A9 恋唄 (内山田洋とクール・ファイブ)Ⓓ 🅱→4/30

A10 心の痛み (朱里エイコ)Ⓑ 🅱

B1 哀愁のページ (南沙織)Ⓑ 🅳

B2 夜汽車 (欧陽菲菲)Ⓐ 🅱→4/30

B3 はだしの女の子 (奈良富士子)

B4 れんげ草 (ビリー・バンバン)Ⓑ

B5 夏のふれあい (フォーリーブス)Ⓑ

B6 途はひとつ (黛ジュン)Ⓐ 🅰→4/25

B7 男の子女の子 (郷ひろみ)Ⓑ

B8 風の日のバラード (渚ゆう子)Ⓓ 🅰→4/30

B9 まるで飛べない小鳥のように (いしだあゆみ)Ⓐ 🅱

B10 芽ばえ (麻丘めぐみ)Ⓓ 🅱→4/30

 

演奏: ワーナー・ビートニックス

featuring 三笠輝彦 (テナー・サックス)、市原明彦 (ドラムス)、こだまたかし (口笛)、ツゥイン・ギターズ、栗林稔 (オルガン)、渋谷章 (ピアノ)、大野雄三 (ハーモニカ)、スリー・トランペッターズ

編曲: 原田良一Ⓐ、小谷充Ⓑ、西田晃Ⓒ、竜崎孝路

制作: 島田雄三/ミキサー: 島雄一、平出誠

備考: SQ方式4チャンネル・レコード

定価: 1,800円

 

 

ほんの40年前に制定された「琵琶湖の日」。それにふさわしい歌謡曲といえば、「琵琶湖周航の歌」…と言いたいところをぐっとこらえて、奈良富士子の「はだしの女の子」を推す。有馬三恵子によるリリカルな歌詞の中でも、Bメロの冒頭にいきなり出てきて鮮烈な印象を残す「琵琶湖」。まさにその頃滋賀県で幼少期を過ごしていた宗内ではあるけれど、何せオリコン最高45位だし、奈良富士子本人も歌番組に出るようなアイドルとして推される存在ではなかったので、リアルタイムでは見過ごしていました。ちゃんと注目曲扱いしてくれたワーナー・ビートニックスにリスペクトしかないです。

72年夏のヒット曲を集めた本盤は、特定の楽器をクローズアップせず、多彩な音をフィーチャーして歌無歌謡の魅力に多面的に迫る『ヒット・バラエティー』編の1枚で、3作リリースされた2枚組の方に寧ろ向いている企画ではあるが、親切なことに1枚ものも2作出ている。単独アルバムが出ている楽器をフィーチャーした曲は基本的にそこからの抜粋だが、それに該当しない新録音もある。この辺の細かい分析は全レコードを聴いて時系列を整理しない限り恐らく無理だし、4チャンネル方式採用の変更も絡んで魑魅魍魎状態になるのは確実。

少なくとも、同日発売されたトゥイン・ギターズをフィーチャーしての『虹をわたって/夜汽車の女』と同じヴァージョンが4曲(「→4/25」を記載)、前月出たビート・オルガン編『京のにわか雨/芽ばえ』からの再収録が4曲(「→4/30」を記載)あり、他の曲の大半も出所が明らかなはず。「心の痛み」は6月リリースされた『ひとりじゃないの・待っている女/華麗なるミラクルハーモニカ・ベストヒット20』(QL-6056A)が初出(朱里エイコの同曲のシングルが7月10日発売なので、歌無盤を先行で出したということだ。ワーナーの戦略凄い!)。各種ハーモニカを絶妙に駆使し、マジカルなサウンドを編み上げているが、これで20曲演り倒すのは相当の体力が要りそうだし、聴く方も覚悟を強要されそう。残念ながら、このハーモニカ企画は「孤高の1枚」止まりとなっている(ベースも同様)。

一方、都合3枚フィーチャーアルバムが残されたのが、こだまたかしの口笛。「れんげ草」はそれらからの抜粋ではなく、本作のための新録音。これも1枚演りきるのに体力が要りそうだが、少なくとも転調に悩まされる必要がないので、楽な楽器(?)ではある。「夜に駆ける」とか吹ける勇者はいないものでしょうかね(爆)。ピアノとトランペットをフィーチャーした盤はワーナー・ビートニックスの枠にないので、ここでしか聴けない貴重な録音は他にも数曲ある。「男の子女の子」の若々しい演奏と高貴なピアノの対比が特に面白い。ドラムやテナー・サックスをフィーチャーした曲も、それぞれのアルバムよりこちらの方で先に出た曲がいくつかある。全体的に疾走感あふれるあのサウンドで統一されているため、ばらつき感がなく付き合いやすい。島雄一氏のミキサーとしての手腕を褒め称えるべきだろう(リヴァーブが程よく効いた「折鶴」あたりは平出氏が手掛けたと思われるが、それもそれで良い)。