ビクター SJV-699
ギター・ヒット・サウンド アルプスの少女
発売: 1973年12月
A1 アルプスの少女 (麻丘めぐみ)
A2 ロマンス (ガロ) 🅱
A3 恋は燃えている (欧陽菲菲) 🅳
A4 色づく街 (南沙織) 🅳
A6 白樺日記 (森昌子) 🅳
B1 白いギター (チェリッシュ) 🅳
B2 魅力のマーチ (郷ひろみ) 🅱
B3 わたしの青い鳥 (桜田淳子)
B4 胸いっぱいの悲しみ (沢田研二) 🅳
B5 海鳥の鳴く日に (内山田洋とクール・ファイブ) 🅱
B6 ぎらぎら燃えて (山本リンダ) 🅱
演奏: ヒット・サウンド・オーケストラ
編曲: 横内章次
定価: 1,500円
ヒット・サウンド・オーケストラ名義としては超名盤『さわやかなヒット・メロディー』に続くアルバムで、今回はコンサート・マスター役を名人・横内章次に一任。彼のカラーが出まくった付き合いやすい作品になっている。一曲目からして前作の余勢をかっての「アルプスの少女」。オーケストラを入れず、自らのギターを重ねまくり鍵盤類と共に重厚な音の壁を築いているのに、どこか歯切れが悪い。筒美京平作品に限ってこのパターンが多いような気がするのだけど(RCA盤の「木綿のハンカチーフ」然り)、何かあったのだろうか。Bメロでベースが凄いことになっているのに、ベーシストの情念を見る思い。この曲でリコーダーが聴きたくなったら、クリスタル・サウンズ盤に走ればいいよ。
2曲目「ロマンス」で一気に晴れる。60年代のサイケ/ソフトロックのアルバムに入ってても違和感がない、エレキシタール、チェンバロが爽快感を出しまくる名アレンジ、名演奏。これも何気にベースが凄い。これが岩崎宏美の曲の方なら、のっけの4曲が筒美祭りになったのだが(爆)、このペースで「恋は燃えている」「色づく街」とギアが入りまくり好演が続く。後者など、73年のレコードを聴いてるとは思えない、予期せぬフュージョン色が現出している。
2年離れて同じ日に生まれ、同時期にヒット曲を連発して、72~73年の歌無歌謡のアルバムには必ずと言っていいほど揃って登場するシンシアとルミ子。後者の最新曲「十五夜の君」も小粋なフュージョンサウンドに生まれ変わっている。イントロだけ聴くと「私鉄沿線」かと思ってしまう(1年早い!)し、「ケアレス・ウィスパー」の残響さえ聴こえてきそう。「白樺日記」もフュージョンとカントリー色をブレンドさせ、まるで別曲になっているではないか。
B面もこの調子で小気味よく進む。他のレコードを聴いても解るけど、基本的にこの時期の曲は素材として極上だから、センスある人が料理すると余計美味しく楽しめる。この盤も、終わってみれば4リズムと各種鍵盤、若干のパーカッション以外の音が一切聴こえて来ず、『さわやかなヒット・メロディー』とは好対照だけど、それでも立派な「オーケストラ・サウンド」に仕上がっている。演奏者名義なんてディレクターの気紛れでしかなかったのだろう。「アルプスの少女」を1曲目に配置せざるを得なかったのもレコード会社の政治力の賜物でしかないと思われるけど、つくづくもったいない。