東宝 AX-2001
最新歌謡ヒット
発売: 1972年9月
A1 京のにわか雨 (小柳ルミ子) 🅵
A2 夜汽車 (欧陽菲菲) 🅳
A3 風の日のバラード (渚ゆう子) 🅱
A4 朝まで待って (朝丘雪路) 🅱
A5 あなただけでいい (沢田研二) 🅲
A6 芽ばえ (麻丘めぐみ) 🅳
A7 ひとりじゃないの (天地真理) 🅶
B1 夏の夜のサンバ (和田アキ子) 🅱
B3 BABY (平田隆夫とセルスターズ) 🅲
B4 さよならをするために (ビリー・バンバン)
B5 こころの炎燃やしただけで (尾崎紀世彦) 🅱
B6 旅の宿 (吉田拓郎) 🅲
B7 京都の女の子 (研ナオコ)
演奏: ミラクル・サウンズ・オーケストラ
編曲: 福井利雄
定価: 1,500円
1970年発足以降、親会社のスター俳優と大量の新人歌手を抱え、地道に歌謡戦線を歩んできた東宝レコードに72年夏、遂にスターが誕生。その名は研ナオコ。さすがの彼女も4枚目のシングル「京都の女の子」で火がつくまでは、「その他大勢」の一人だったが。
同様に試験的意味合いで歌無歌謡のアルバムがいくつか出ていたが、「京都の女の子」ヒットの勢いに乗って新規番号帯でのシリーズ1作目としてこのアルバムをリリース。6月発売した『最新歌謡ヒット』と異なり、通常のステレオミックスとされているが(その割に4チャンネルっぽい音像配置にはなっている)、アレンジャークレジット・福井利雄が明記されたことで、ポリシーの明確化が図られた。以後74年に至るまで、やや乱発気味ではあるが名物歌無歌謡シリーズの一つに君臨していく。
何せこの時期、同じような選曲の盤が競合しすぎたので、この盤に関して特出したポイントを探すのも難しいのだが、大袈裟なアレンジになっていない割に質感が実にカラフル。オリジナルに比べると相当簡素化されたという印象の「芽ばえ」でさえ、細かい音を敷き詰めて重厚な音像を演出しているし、以後ミラクルサウンズの顔となった感がある鍵ハモがさわやかに鳴り響き、ときめき度満点。「夏の日のサンバ」も一聴して手堅い感じだが、クィーカによりもたらされるノリが実にドラッギーだ。「木屋町の女」が意外にもクロいグルーヴでハッとさせるが、これも「こんなにこんなに愛してる」コンビの作品だったとは。最後はやっと誕生した自社スターの曲故、慎重に扱われた「京都の女の子」で締める。ジャケットのさわやかさに見合った、程よい雰囲気作りに成功しているアルバム。このシリーズはその後、意外に大胆な方向へと揺れながら続行していく。