東芝 TP-72374~5
今宵踊らん ベスト・ヒット’82~’83
発売: 1982年
A2 ラ・セゾン (アン・ルイス)
A3 6番目のユ・ウ・ウ・ツ (沢田研二)
A5 夢の旅人 (松山千春)
A7 悪女 (中島みゆき)
B1 ハロー・グッバイ (柏原芳恵)
B2 ウエディング・ベル (シュガー)
B3 匂艶 The Night Club (サザンオールスターズ)
B4 NINJIN娘 (田原俊彦)
B6 100%…SOかもね (シブがき隊)
B7 なめんなよ (又吉&なめんなよ)
C1 ダンスはうまく踊れない (高樹澪)
C2 心の色 (中村雅俊)
C4 涙をふいて (三好鉄生)
C5 契り (五木ひろし)
C6 暗闇をぶっとばせ (嶋大輔)
C7 けんかをやめて (河合奈保子)
D1 待つわ (あみん)
D3 ビギン・ザ・ビギン (フリオ・イグレシアス)
D4 シティ・イン・シティ (マッドネス)
D5 アイ・オブ・ザ・タイガー (サバイバー)
D6 完全無欠のロックンローラー (アラジン)
D7 い・け・な・いルージュマジック (忌野清志郎&坂本龍一)
演奏: 奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ
編曲: 高野志津男、山本有信、五十嵐謙二
定価: 4,600円
遂に登場、由緒ある舞踊音楽の殿堂シリーズ『今宵踊らん』。60年代前半にスタートし、67年以降は歌無歌謡の方法論を取り込んで確実にダンス・ファンの心を鷲掴み。何せ、ダンス・フロアにいること自体が「若き嗜み」だった時代だ。いくらロカビリーだ、ゴーゴーだと騒ごうが、紳士淑女が集まる空間に流れていたのは軽快なラテン・リズム。特定のステップに囚われず、音楽に身を委ねながらコミュニケーションに興じ、時に恋のきっかけを掴むなど。ハイソで無邪気な時代だった。
それから10余年、ディスコだフィーバーだ色々あろうが、社交ダンスで若さを保ちたい人々の精神性は決して歳を取ることなく、このシリーズも時代の流行うたのエッセンスを取り入れながら、しぶとく受け入れられ続けた。そして迎えた1982年。1年を飾った大ヒットナンバーを集大成し、あの色に染め上げてのアルバムが恒例の登場。たとえ歌無歌謡スピリットは息絶えようが、このシリーズはそんなのお構い無しに突っ走る。これのどこが若さなんじゃいと突っぱねようにも、自然に体が動いてしまい、パートナーを探しに街に繰り出したくなってしまう。罪なやつである。
なにせのっけから「セーラー服と機関銃」という強力アイテムである。曲のアレンジがどうとか、そんな考えモードなんてどうでも良くさせる、さあ踊りましょうという強烈なメッセージだけが発信されており、気がつけば「カ・イ・カン」である(爆)。耽美な「ラ・セゾン」も、病的な「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」も、ひたすら「さあ踊りましょう」である。決して「踊ろうぜ!」じゃないのだ。後者のエンディングなど、笑って「ご苦労様でした」と言うしかない。「北酒場」(当然細川たかしの方です、念のため)にそんなに違和感ないのは、対象の年齢層が読めてるからだろうか。こればかりは70年代歌無歌謡を聴く時とそんなに変わらない心構えで接せる。「哀愁のカサブランカ」も元がオールドファッションな洋楽なので、スムーズにチーク向きのヴァージョンに生まれ変わっている。けど「悪女」には、ニヤニヤするしかない。B面後半もそんなまさか曲のオンパレードだけど、「NINJIN娘」(当時トシちゃんファンの間では炎上騒ぎめいたことになってたとか)は元からチャールストンだけに違和感ないし、本ブログに於ける山下達郎初登場「ハイティーン・ブギ」もジェット団感が出ていて悪くない。1枚目の締めは選曲そのものに笑うしかない「なめんなよ」。猫が出した唯一のヒット・レコードである(笑)。
対して「ダンスはうまく踊れない」で2枚目を始めるのは嫌がらせか(笑)。大凡チーク向きではない「涙をふいて」や「契り」でなんか荒れそうなムードを「けんかをやめて」が緩和するし、「待つわ」なんて踊りながら歌ったりしたら嫌味でしかない(爆)。とてもムカデ・ダンスなんてできそうにない「シティ・イン・シティ」とか、意外とテンポ感だけオリジナルに似せている「アイ・オブ・ザ・タイガー」など洋楽曲を経て、最後に大爆弾「い・け・な・いルージュマジック」。おもちゃの偽札を巻き散らしつつ、陽気に踊りまくりたいものです。
音楽的に分析するとネタ作でしかないけど、とにかく心を揺らすにはもってこい、老若男女問わず受け入れられるべきアイテム(さすがに2つ目に対してはキツいかな)。ちなみに翌年出た盤には「探偵物語」「Tシャツに口紅」「冬のリヴィエラ」が揃い踏みしています。無闇に価値を高めないでね…