黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は古賀政男大先生を偲んで

JACK JW-1017~8

昭和大演歌30選

発売: 1979年?

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ジャケット



A1 影を慕いて (藤山一郎)

A2 人生劇場 (村田英雄)

A3 おもいで酒 (小林幸子) 🅰→6/11

A4 女の意地 (西田佐知子) 🅳

A5 夜霧よ今夜も有難う (石原裕次郎) 🅰→4/28

A6 ついて来るかい (小林旭)

A7 千曲川 (五木ひろし) 🅰→4/28

B1 長崎は今日も雨だった (内山田洋とクール・ファイブ) 🅲→4/28

B2 君は心の妻だから (鶴岡雅義と東京ロマンチカ) 🅵

B3 なみだ恋 (八代亜紀) 🅱→4/28

B4 別れの夜明け (石原裕次郎八代亜紀)

B5 心のこり (細川たかし) 🅳

B6 うそ (中条きよし) 🅱

B7 純子 (小林旭)

B8 北国の春 (千昌夫) 🅲→6/11

C1 くちなしの花 (渡哲也) 🅲→4/28

C2 唐獅子牡丹 (高倉健) 🅰→4/28

C3 よこはま・たそがれ (五木ひろし) 🅵

C4 日暮れ坂 (渡哲也)

C5 北の宿から (都はるみ) 🅰→4/28

C6 津軽海峡冬景色 (石川さゆり) 🅲

C7 ひとり (渡哲也) 🅱

C8 すきま風 (杉良太郎) 🅱

D1 与作 (北島三郎) 🅲

D2 花街の母 (金田たつえ) 🅲→6/11

D3 みちづれ (牧村三枝子) 🅰→6/11

D4 舟唄 (八代亜紀) 🅰→6/11

D5 夢追い酒 (渥美二郎) 🅲→6/11

D6 惜春 (五木ひろし) 🅱

D7 港夜景 (細川たかし) 🅱

 

演奏: レッド・ポップス・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 2,200円

 

考えてみれば、2枚組を3日連続で取り上げるのは初めて。コスパ的に便利ではあるけれど、曲数が多いと全体を把握するのが疲れるのだ…ましてや「昭和大演歌」となれば余計。その業績を正当に讃えると変な方向に波風が立ちそうな古賀政男先生を、普通の歌無し歌謡レコードで偲ぶとなるととても無理だし、そんな時こそこんなレコードの出番なのだ。79年当時までの演歌の軌跡をバランスよく辿る、なんて内容ではないけど、冒頭2曲の収録に免じて許してやって。

「影を慕いて」と言えば、このブログの趣旨からかなり離れているため候補盤から外れてもらった、とあるセミプロバンドの自主制作盤に収められているこの曲の解説を、こっそり引用せずにいられない。

「青春の苦悩をこの曲に寄せた古賀政男、25才の作品。戦前、戦後を通じ、これ程若者を共鳴させた曲はまずないであろう。」(恐らくバンドリーダー執筆)

そのレコードが出たのは恐らくその初出の36年ほど後のことと思われるが、その当時でさえこれである。若さを象徴する音楽という意識は、どう移り変わってきたのだろうか?来年で誕生90周年だ、この曲。クラビオリンと並び、古き良き演歌を象徴する音色となったと思しきコルネット・ヴァイオリンが先導しつつ、モノトーンなオルガンも加わってモダンな音構築が行われているこの盤のテイクは、恐らくこれのための新録音だろう。個人的には「夕陽が泣いている」のイントロに続けて歌いがちになってしまう(汗)「人生劇場」も、大正琴と尺八をフィーチャーしながら、オルガンの音が近代のカラーを醸し出す。それ以前にステレオの定位が、最早レトロでもなんでもない。

冒頭2曲の後、いきなり「おもいで酒」へと大胆にタイムワープするが、ここでこの盤の供給元がJackである事実を思い知る。当然、6月11日紹介の『最新ヒット歌謡』に入っていた、「2番の頭でベースが思いっきり間違えるヴァージョン」を流用しているのだ。他にも4曲、78~79年のヒット曲が同アルバムから抜粋されているが、さらに7曲は4月28日紹介の『昭和演歌』と同じヴァージョン。そちらの発売元がエルムということを考えると、この辺の曲の原盤権って一体どうなってるんだろうかと不思議な気分にさせるのだ。今日初紹介のテイクも同じように怪しいのが多くて、「女の意地」は淡々としたオーケストレーションが実にフィルム・ノアール的光景を映し出す。『昭和演歌』と同テイクの「唐獅子牡丹」と同じプロジェクトから引っ張って来られたのは確実で、一体誰のアレンジなのだろうか。「君は心の妻だから」は、キーボードの音色から判断して新しめの録音と思われるが、1コーラス目の演奏のタイミングが完全にずれている。正にJackマニアを狂喜させそうだが、よくOK出たよな。左側のアコギの演奏も所々危なっかしいし。「別れの夜明け」からの3曲で聴けるのは確実に好夫ギターだが、いつ頃の録音なのか読めない。「純子」は珍しくウクレレ使用。よこはま・たそがれも確実に好夫ギターだが、キレのいいピアノの演奏が印象に残る。71年当時のテープメーカー用の録音かもしれない。「日暮れ坂」はまるで正統派エレキコンボのような演奏に、カラオケ仕様のキーボードの薄い音を加えた仕上がりで異色。フォークっぽい歌を乗せれば、海外のマニアがアシッド・フォークの自主制作盤音源と思い込んで狂喜するかも(爆)。「すきま風」のイントロのフルートがあまりにもいい音で、もったいない感も。「与作」はあの調子の演奏だが、両チャンネルに配されたギターが何故か「ホテル・カリフォルニア」色を現出させるシュールな響き。何やかんや言っても、Jackですから、利点を探すのが楽しいのですよ。やはり、ここにもいてくれてよかったです、「夢追い酒」のコーラスのねえちゃん達。改めて聴くと、3番の「捨てた~」でうち一人がやけになってるのがはっきり聞き取れる(爆)。ジャケットも風情でいいですね。