黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は山上路夫さんの誕生日なので

クラウン GW-8033~34

愛の化石 哀愁のギター・ムード

発売: 1969年12月

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ジャケット



A1 まごころ (森山良子) 🅱

A2 バラ色の月 (布施明)

A3 あなたの心に (中山千夏) 🅱

A4 いいじゃないの幸せならば (佐良直美) 🅱

A5 人形の家 (弘田三枝子) 🅲

A6 銀色の雨 (小川知子)

A7 花と涙 (森進一) 🅲

B1 恋泥棒 (奥村チヨ) 🅱

B2 悲しみは駆け足でやってくる (アン真理子) 🅱

B3 愛の化石 (浅丘ルリ子)

B4 涙でいいの (黛ジュン)

B5 星空のロマンス (ピンキーとキラーズ)

B6 禁じられた恋 (森山良子) 🅳

B7 恋の奴隷 (奥村チヨ) 🅱

C1 君は心の妻だから (鶴岡雅義と東京ロマンチカ) 🅱→5/3

C2 港町シャンソン (ザ・キャラクターズ) 🅲

C3 雲にのりたい (黛ジュン) 🅱

C4 長崎は今日も雨だった (内山田洋とクール・ファイブ) 🅷

C5 夜明けのスキャット (由紀さおり) 🅰→5/3

C6 フランシーヌの場合 (新谷のり子)

C7 さすらい人の子守唄 (はしだのりひことシューベルツ) 🅱

D1 港町ブルース (森進一) 🅷

D2 時には母のない子のように (カルメン・マキ) 🅰→5/3

D3 白いサンゴ礁 (ズー・ニー・ヴー) 🅲

D4 お気に召すまま (じゅん&ネネ) 🅳

D5 愛して愛して (伊東ゆかり) 🅲

D6 或る日突然 (トワ・エ・モア) 🅳

D7 山羊にひかれて (カルメン・マキ)

 

演奏: いとう敏郎と’68オールスターズ

編曲: 福山峯夫

定価: 2,400円

 

このブログの「69年率」は現在のところでも相当なもので、長崎は今日も雨だった港町ブルースは今日の盤で8ヴァージョン目、「君は心の妻だから」は5月3日取り上げた盤と同テイクだが、それでも7ヴァージョン目に当たるし、歌無歌謡界全体にとっても最も華な年だったのは間違いない。そんな年の代表的ヒット曲を手っ取り早く総ざらいするなら、今なら『青春歌年鑑』のような便利なコンピCDで、しかもオリジナル歌唱盤が揃うので済むけど、当時となればこのような歌無歌謡総括みたいな盤に頼るしかなかったわけ。この盤は全編同じ演奏者で統一されているため、深く考えず振り返ってみましょうみたいなシチュエーションにはまさにうってつけ。それじゃ済まない場合は、宗内のように同じ曲を20ヴァージョン以上聴き比べないと気が済まなくなるのである(汗)。

とにかく、全編大ヒット曲みたいなもので、翌年以降のクラウン2枚組の主流となる、サックスギタードラムその他をバランスよく配して、時には弾けきらずに終わった曲にまで目を向け、その時期の空気感をコンパクトに封じ込める傾向にまだ至っていない。まぁ、それでいいんだろうけど。まぶち・ゆうじろうのサックスを立て続けに聴くのに比べると、このギター・サウンドの小気味良さの方がまだ気楽ではあるし、微妙に緩急付けた曲順のおかげで全体の流れが単調にならずに済んでいる。個々の曲がどうとかは敢えて触れないけど、「禁じられた恋」はさすがにクラウン大正琴ヴァージョンに比べると軽く、かつジャングル感がある(但し、キハーダの代わりにクラッシュシンバルを使っている点は同じ)。「山羊にひかれて」などで聞かれるチージーなオルガン音も、当時のクラウンにしては異色な感触。いかにサウンドをコンパクトにするかという点では、とても参考になるアルバム。この強者ラインナップに4曲を叩き込んだ山上路夫さんの業績は、決して軽視できません(そして意外ですが、筒美京平曲が1曲も入ってません…)。