黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日はピーター (池畑慎之介さん)の誕生日なので

クラウン GW-5116 

夜と朝のあいだに ドラム・ドラム・ドラム

発売: 1969年12月

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ジャケット(22/3/31更新)

A1 バラ色の月 (布施明) 🅱

A2 恋泥棒 (奥村チヨ) 🅲

A3 夜と朝のあいだに (ピーター) 🅱

A4 悲しみは駆け足でやってくる (アン真理子) 🅳

A5 銀色の雨 (小川知子) 🅱

A6 どしゃ降りの雨の中で (和田アキ子)

A7 人形の家 (弘田三枝子) 🅳

B1 星のナイトクラブ (西田佐知子)

B2 星空のロマンス (ピンキーとキラーズ) 🅱

B3 新宿マドモアゼル (チコとビーグルス)

B4 涙でいいの (黛ジュン) 🅱

B5 雨に濡れた慕情 (ちあきなおみ) 🅱

B6 今日からあなたと (いしだあゆみ)

B7 可愛いあなただから (ズー・ニー・ヴー)

 

演奏: ありたしんたろうとニュービート

編曲: 小杉仁三

定価: 1,500円

 

ありたしんたろうとニュービートのファースト・アルバムにして、歌無歌謡界ではある種のホーリーグレイルと一部でされている1枚。この1枚を手に入れたこと自体がドラマだった。

ジャンクヤード漁りを繰り返しながら、時にジャケットと違う盤が中に入っていたり、2枚組なのに片方が欠けていたりという盤を掴まされていた宗内。どうせ100円なんだからと開き直りつつ、ある時期からこっそり中身チェックを怠らなくなったわけですが、ある日とあるクラウンのアルバムを、ジャンクコーナーから拾い上げ、持ってないけど内容的にどうなのかな、盤は綺麗かなとチェックしたら、ジャケットと違うタイトルがレーベルに書かれている。ははぁ、ありたしんたろうだな、とB面3曲目に目をやってみたら、まさかの「アレ」だった!躊躇せず、別のジャケットに包まれたこの盤を、他のジャンク品と一緒にレジに持って行きました。やたら飛びそうだけど、別にいいじゃんか(実際飛びまくる)。チャンス・ミーティングとはまさにこのこと。

チコとビーグルスの3枚目のシングルにして、筒美京平作品としても和ものフィールドで至高のポジションを獲得したとされる「新宿マドモアゼル」。この曲の地位を高めるのに大いなる貢献をしたのが、孤高の歌姫、故・渚ようこさんである。とある和ものイベントで、DJが流すこのニュービート・ヴァージョンをバックに熱唱した彼女のパフォーマンスは、最早伝説の域に達している。そんなこともあって、ちゃんとしたジャケットに入っている美品でしかも帯付きであるこのレコードの価値は、下手したらジャンク盤が100枚買える境地に達しているのではないかと思う。それが、間違ったジャケットに入れられていたとはいえ、ジャンク価格で我が手許に来たのですから。これこそが快楽のDig道なんですよ。なので、写真はレーベルのみ。他のサイトから持って来るなんて真似はしません。

前置きはこのくらいにして、サウンドの印象はリズムを強化したグルーヴィーな歌謡インスト以上のものではなく、70年以降のドラムものにありがちなテクニカルなトリックとか、妙なサウンド演出要素は皆無。安心して「ノレる」。俺が俺が、みたいなムードがない、ひたすら安定して走り続けるドラムに、チージーなオルガンやら艶かしいフルートやら、あらゆる音が踊らされている。昨日紹介したヴァージョンではひたすら沈むばかりだった「悲しみは駆け足でやって来る」もお察しの通り、ノリノリだ。フルートも煽られて1オクターブジャンプしているし(低い音が見え隠れするのはかえってお茶目でいい)、2コーラス目はドラムブレイク+ギターのみの演奏でかえって爽快。そこを抜けたら、ベースが大暴れする。天晴だ。続く銀色の雨もフルートがラブリーに響き、跳ねまくるリズムに絶妙に反応してる。やっぱグルーヴィーなバンドサウンドにフルートはよく合いますね(低い音が見え隠れ…以下同文)。「どしゃぶりの雨の中で」「雨に濡れた慕情」も和もの民に熱烈な支持を得ている演奏だ。

問題の「新宿マドモアゼル」は、アレンジがどうとかドラミングがどうとかを超越している。この曲を演っているということ自体が「神」な演奏である。こればかりは真顔で言わずにいられません。夕陽のようなカクテル飲んで、またひと踊りしたくなってしまうよ。

 

追記: ジャケットが入手できましたので(当然盤は2枚に)、さりげなく更新させていただきました(22年3月31日)