黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1974年、今日の1位は「追憶」

東芝 TP-40031~32 

ビッグ・ヒット1974~75 ベスト28

発売: 1974年

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ジャケット



A1 神田川 (かぐや姫) 🅴

A2 白いギター (チェリッシュ) 🅵

A3 魅せられた夜 (沢田研二) 🅲

A4 夜空 (五木ひろし) 🅲

A5 恋の風車 (チェリッシュ) 🅲

A6 心もよう (井上陽水)☆ 🅵

A7 恋のダイヤル6700 (フィンガー5) 🅱

B1 あなた (小坂明子) 🅲

B2 くちなしの花 (渡哲也) 🅴

B3 薔薇の鎖 (西城秀樹) 🅱

B4 しあわせの一番星 (浅田美代子) 🅲

B5 赤ちょうちん (かぐや姫) 🅱

B6 恋と海とTシャツと (天地真理) 🅱

B7 しのび恋 (八代亜紀) 🅳

C1 なみだの操 (殿さまキングス) 🅵

C2 別れの鐘の音 (五木ひろし) 🅲

C3 襟裳岬 (森進一) 🅶

C4 夫婦鏡 (殿さまキングス) 🅳

C5 うそ (中条きよし) 🅳

C6 私は泣いています (りりィ) 

C7 二人でお酒を (梓みちよ) 🅵

D1 追憶 (沢田研二) 

D2 傷だらけのローラ (西城秀樹)☆

D3 夢みる頃 (伊藤咲子)☆

D4 風のいたみ (りりィ)☆ 

D5 挽歌 (由紀さおり)☆ 🅱

D6 ポケットいっぱいの秘密 (アグネス・チャン)☆☆ 🅱

D7 激しい恋 (西城秀樹)

 

演奏: ホット・エキスプレス

ジミー竹内とエキサイターズ(☆)

編曲: 斎藤恒夫、市原宏祐(☆)、荒木圭男(☆☆)

定価: 3,000円

 

東芝さんも出してました、年末恒例特価2枚組総括シリーズ。同種の企画をなんと40種一気にリリースし、ジャケット見開き表4で告知されているが、明らかにライトユーザーに訴えるための企画であり、「Collect ‘Em All!」なんて挑発的フレーズとは無縁の賜物である。ここでメインとなっている音源は、ゴールデン・サウンズに代わり東芝歌無歌謡の本流に躍り出た「ホット・エキスプレス」名義で出たもの。いかに最新ヒットに早々と対応するかをアピールするネーミングだったのだろうが、どうせならエキスプレス・レーベルで出しゃよかったのに。もっとも、翌年にはゴールデン・サウンズ名義が復活しているのだが。そこに適度にアクセントを加えるため、もう一つの名物シリーズ『ドラム・ドラム・ドラム』からの曲をいくつか放り込んでいる。

全体的印象としては、守りに入っているけれど、クリスタル・サウンズほどフットワークが軽くないなという感じ。だからこそ、ジミー竹内を混ぜて所々過激な展開にしているんだろうけど、曲が74年のもの故そんなに大差を感じない。「心もよう」の終盤にきて、やっと「エキサイターズだな」という展開に気付くのである。ただ、この曲は東宝の好夫ヴァージョンのカオスに勝てるものがないな。いくらドラムが激しく炸裂していても。「あなた」「くちなしの花」襟裳岬あたりも、他社盤のメロトロンを幻聴せずにいられない、ふつーの出来。

D面に行くとエキサイターズメインで、多少刺激的展開になる。「傷だらけのローラ」の狂乱を抜けた後、伊藤咲子の2枚目のシングル「夢みる頃」というレア選曲で、フルートが可憐に誘惑しまくるのが聴きもの。「ポケットいっぱいの秘密」のティンパン・サウンドはなかなかの再現度。なんか欠けてるものが沢山あるなという聴後感だけど、無難にまとまった2枚組。手軽な企画の割に、ライナーの内容がめちゃ濃い。B6のタイトルが「海と恋と~」と間違ってクレジットされてるのはご愛敬。