黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1973年、今日の1位は「恋する夏の日」(6週目、ついでに「左ききの日」)

東宝 AX-2017  

最新歌謡ヒット

発売: 1973年9月

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ジャケット



A1 恋する夏の日 (天地真理) 🅴

A2 男のなみだ (並木ひろしとタッグ・マッチ)

A3 わたしの彼は左きき (麻丘めぐみ) 🅴

A4 ひとりっ子甘えっ子 (浅田美代子) 🅴

A5 裸のビーナス (郷ひろみ) 🅵

A6 初恋の散歩道 (栗田ひろみ)

A7 ふるさと (五木ひろし) 🅴

B1 草原の輝き (アグネス・チャン) 🅶

B2 遠い灯り (三善英史)

B3 燃えつきそう (山本リンダ) 🅳

B4 おんなの涙 (八代亜紀) 🅲

B5 情熱の嵐 (西城秀樹) 🅲

B6 くちべに怨歌 (森進一) 🅲

B7 君が美しすぎて (野口五郎) 🅱

 

演奏: 市原宏祐 (サックス)、木村好夫 (ギター)/ミラクル・サウンズ・オーケストラ

編曲: 福井利雄

備考: RM方式4チャンネル・レコード

定価: 1,500円

 

さすがの東宝も「13日の金曜日」(松村幸子)を歌無歌謡化していなかった(爆)、というわけで、何度目かの登場か数えるのも面倒な『最新歌謡ヒット』です。奇しくも「左ききの日」ということで、「わたしの彼は左ききが収録されている盤が選ばれるのは必需だった訳ですが、過去5週1位を独走していた「恋する夏の日」をメインに据えておかなきゃということで。

どうやら他社の名シリーズの看板プレイヤーの中の人という説が濃厚な市原宏祐氏が、メインフィーチャーの一人目。「恋する夏の日」はテナーでなくアルト・サックスで演奏され、いやらしさではなく若々しさを打ち出した演奏が「中の人」の方では聴けない新鮮な展開。続く曲は「女のみち」か…と思いきや、ぴんからのスピンオフグループ、タッグマッチの初シングルで自社推し枠だ。手慣れた好夫ギターがいつもの酒場ムードに連れてってくれるが、両側から囁きかけてくるフルートがいかにも新米ホステスっぽい感じでナイス。「わたしの彼は左きき」も「恋する夏の日」同様、サックスのさわやかな応用法を実践しているが、「ひとりっ子甘えっ子」は好夫ギターの効果でこの曲の全ヴァージョン中でも屈指の侘しさ。「喝采」の雰囲気も取り入れたアレンジは、トップアイドルの曲から未知の色を引き出している(が、やはりメロトロンを幻聴…汗)。歌唱力では浅田美代子以上にアレなことで有名な栗田ひろみ「初恋の散歩道」も、好夫ギター効果で耳に優しい歌無歌謡に変貌。B面ではサックスの方に比重が置かれていて、「燃えつきそう」が狂乱とラブリーさの狭間を突き進んだような演奏で印象に残る。この2大プレイヤーが一緒に演奏している曲がないのが、残念っちゃ残念。好夫曲のサイドギターも、サックス曲でフィーチャーされてるギターも、恐らくジミー・スコットと思われる。ノークレジットですけど…