黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は渥美二郎さんの誕生日なので

CBSソニー 18AH-730

最新ヒット歌謡ベスト18

発売: 1979年6月

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ジャケット



A1 愛の嵐 (山口百恵)

A2 燃えろいい女 (ツイスト)

A3 魅せられて (ジュディ・オング) 🅲

A4 夢去りし街角 (アリス)

A5 ビューティフル・ネーム (ゴダイゴ)

A6 いとしのエリー (サザンオールスターズ) 🅲

A7 青春気流 (榊原郁恵)

A8 愛しのキャリアガール (円広志)

A9 欲望の街 (ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)

B1 YOUNG MAN (Y.M.C.A.) (西城秀樹)

B2 窓 (松山千春)

B3 I SAY GOOD-BYE SO GOOD-BYE (矢沢永吉)

B4 君は薔薇より美しい (布施明)

B5 夢追い酒 (渥美二郎) 🅰→4/7

B6 おもいで酒 (小林幸子) 🅲

B7 だから今夜は (増位山太志郎) 

B8 港夜景 (細川たかし) 🅲

B9 男と女・昭和編 (みなみらんぼう・井手せつ子) 

 

演奏: クリスタル・サウンズ

編曲: 無記名

定価: 1,800円

 

王者クラウンが遂に歌無歌謡市場から撤退した79年春、辛うじて生き残り組に名を連ねたクリスタル・サウンズ。カラオケ市場と効率よく住み分けを行った結果、オリジナル・ヴァージョンへの忠実な対応を加速しつつ、アルバム構成に於ける「無理しすぎ」方針もよりエスカレート。今作も両面合わせて71分という詰め込み過ぎぶりで、はなからレコードとしての繰り返し利用はお避け下さいと強行態度を見せているようだ。アレンジャークレジットもなく、余計顔が見えづらい状況になっているが、それなりにサウンドの強化も伝わりやすくなっている。リードメロディの演奏に強烈な個性を刻印していないところは、いかにもカラオケ対応の副作用という感じだけど、その分バックの演奏に気合が感じられる。「愛の嵐」「魅せられて」のような自社曲では、オリジナルの良さを生かしつつ力不足が露呈しているところもあるが、「燃えろいい女」あたりでは快走ぶりがよく伝わる。「夢去りし街角」が特にいい。恐らくフリューゲルホーン2台で奏でられていると思われるリードの演奏が妙に平坦で、控えめであろうという姿勢がもろ出ている分、ちゃんと受け入れてあげようという気持ちにさせてくれる(やはり現役音大生を雇って演奏させたのだろうか?)。そんで、後ろの演奏がアリス版より良かったりするから罪なものだ。こういうのを笛の演奏で聞いてみたかったですね。「ビューティフル・ネーム」は演奏者みんなが陽気に振る舞おうという感じがよく出ているし、ヒット確実だろという態度で臨んだと思しき「愛しのキャリアガール」もなかなかのはりきりぶりで、完全に空振りするとは演った方も予測できなかったであろう(笑)。「Young Man」でもはりきりまくってるコーラスの姉ちゃん達の胸中は、一体どうなっていたのだろう…

超アーバンな君は薔薇より美しいから「夢追い酒」へと急転落するのがこの盤のヤマであるが、やっぱコーラスの姉ちゃん、ちょっと萎縮気味。一人で奮闘させなくても、て思います。やっぱJack盤のコーラスが最強でしょう、というか自社曲でしょソニーさん(笑)。こんな分裂気味の選曲を受け入れにくくさせてしまったのが、歌無歌謡時代末期の悲しみ。リゾート音楽の主役の座をフュージョンに奪われた効果は、リズムアレンジや録音の強化にはっきり現れているのに。