黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日はアグネス・チャンの誕生日なので

CBSソニー SOLU-71

歌謡ワイド・スペシャ 

発売: 1975年7月

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ジャケット



A1 ささやかな欲望 (山口百恵)Ⓐ 🅱

A2 絵日記 (チェリッシュ)Ⓑ 🅲

A3 別れの接吻 (森進一)Ⓑ 🅱

A4 人恋しくて (南沙織)Ⓐ 🅳

A5 夕立ちのあとで (野口五郎)Ⓐ 🅲

A6 誘われてフラメンコ (郷ひろみ)Ⓒ 🅱

A7 白いくつ下は似合わない (アグネス・チャン) 🅲

A8 至上の愛 (西城秀樹)Ⓑ 🅲

B1 時の過ぎゆくままに (沢田研二)Ⓑ 🅲

B2 ふたりの旅路 (五木ひろし)Ⓐ 🅲

B3 ロマンス (岩崎宏美)Ⓐ 🅳

B4 やすらぎ (黒沢年男)Ⓒ 🅲

B5 シクラメンのかほり (布施明)Ⓑ 🅲→5/10 

B6 考えさせて欲しいのよ (西川峰子)Ⓐ 🅱

B7 想い出まくら (小坂恭子)Ⓐ 🅲

B8 天使のくちびる (桜田淳子)Ⓐ 🅲

 

演奏: クリスタル・サウンズ

編曲: 矢野立美Ⓐ、渡辺博史Ⓑ、横内章次Ⓒ

定価: 1,700円

 

突然ですが、帯はアルバムの顔の一部、ですよね。なんか見知らぬアルバムだなと思ってよく見たら、既に帯無し状態で持ってるアルバムに帯が付いたものだったり、その逆だったり。そんで、実物を買ってから既に持ってることに気付いたりすると、まさに地獄。両方ジャンクコーナーから救済したものだったら、まだましだけど。そんなわけで、今日語るアルバムは、手元に2枚あります。ジャケットが魅力的だとは思うけど、その特徴を脳裏に焼き付けるのに失敗したみたい。丁度2枚目(帯付き)を手に入れてしまう寸前に、趣を共有する盤に対して、お互いに意地を貼りすぎて死闘したという、タイミングの問題もあったし(汗)。

そうですよ、クリスタル・サウンズに対しては、そこまでやりますので。でも、75年後半のヒットを集めたこの盤の場合、ジャケットは別にしても、最初に入手した時のインパクトが弱かったかなってのはある。レギュラー盤としては75年早くも5枚目となるアルバムだけど、それまでに比べると守りに入ったというか、正統派イージーリスニング路線との距離を縮めてしまったという印象があるのだ。こじんまりしたところが逆説的に心を揺さぶった従来のクリスタル路線とは、ちょっと違うかなって感じ。

容易な比較対象がある。5月13日のミノルフォン盤でも並んで取り上げられていた、「人恋しくて」「夕立ちのあとで」ミノルフォン盤にも、個別未表記ながら同じ矢野立美氏のクレジットがあり、どっちの曲も恐らく同じ譜面を使い回ししているようだ。使用楽器が殆ど同じなのである。しかし、ミノルフォン盤の方が明らかに抜けのいい音をしている。こちらのソニー盤は、前者が自社アーティストの曲ということもあってか、相当慎重になってる印象。フルートの音の好みも、あっちの方に軍配を上げたいし、後者のギターのエコー処理もあっちの方がシャープだったりして。要するに、模索状態から抜けて、よそ行きの顔になっちゃったという感があるのだ。「誘われてフラメンコ」で横内章次氏を起用しているが、リードをとるサックスのフレーズに原曲の歌メロに関係ない音があって、それが妙に目立ってしまってる。ギターだけ聴かせればそれで十分なのに…エンディングの猛烈なシンセソロはいいんだけど。「白いくつ下は似合わない」も、クラウン盤の勝ち。ここでは「白い靴下はもう似合わない」とミスタイトルされているが、それを特徴として叩き込んでおけばよかった…なんか、ダメダメなところしか見つける気がないモードに入ってしまってるけど、最後の最後「天使のくちびる」で大逆転。先月26日取り上げたミノルフォン盤は全然冴えない感じだったけど、やっと出てきたリコーダーの魔法でこちらの快勝。ベースもはりきっているし、全体がラブリーに弾けまくった名演だ。正にジャケットのイメージをこの1曲に集約した感じ。そしてここから先、待ってましたとばかりクリスタルの逆襲が始まるのである…