黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は日野てる子さんを偲んで

東芝 TP-7214 

ギター! ヒット・フラッシュ No.2

発売: 1967年

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ジャケット



A1 霧のかなたに (黛ジュン)

A2 北国の青い空 (奥村チヨ)

A3 好きさ好きさ好きさ (ザ・カーナビーツ)

A4 君に会いたい (ザ・ジャガーズ)

A5 空は夢の泉 (山内賢)

A6 浜辺は夜だった (日野てる子)

B1 マリアの泉 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)

B2 いとしのジザベル (ザ・ゴールデン・カップス) 

B3 東京ブルー・レイン (ザ・ピーナッツ)

B4 渚のセニョリーナ (梓みちよ)

B5 ギター子守唄 (ザ・リンド&リンダース)

B6 センチメンタル波止場 (尾藤イサオ)

演奏: 横内章次 (ギター)/ゴールデン・サウンズ

編曲: 横内章次

定価: 1,500円

 

歌無歌謡曙の年、1967年にリリースされたアルバムの中でも、和製ポップス~GSにほぼ的を絞った点でまさに孤高の1枚。ライナーに目を通しても、「グループ・サウンズ」という言葉は一切登場せず、従来の歌謡曲と別の流れで登場した新しいサウンド、というニュアンスをどう表現するか、未だ迷い状態の中という感じがする。とにかく、カーナビーツ、ジャガーズカップス、リンドのデビュー曲がこういう流れに揃い踏みしてるというのは、今思えば記念碑的。

ただ、インスト音楽として、躍動感を優先した作りになっていないのは、ある種の人にとっては落胆ものかも。自分は別に、どうでもいいんですけどね。こんな平坦な「好きさ好きさ好きさ」があっても、悪いことじゃあるまいし。まったりとしたオーケストレーションの中を、奔放に突き進む横内ギター。若さだよファズだよなんて風潮にお構いなしに、ナイロンギターで自己主張。恐らく4トラック録音と思われるが、早々とリード&サイド二役をダビングしてこなしている。「君に会いたい」は不思議とオリジナル以上に疾走感があって、やる気も爆発してるし、逆に「浜辺は夜だった」ではおしゃれなニュアンスを強調して、他の曲とうまくバランスをとっている。B面では、予想したほど骨抜きされてないどころか、楽曲の素晴らしさを浮き彫りにしている「いとしのジザベル」と同じほど、「センチメンタル波止場」の選曲が貴重。恐らく、歌無歌謡界で初めて取り上げられた筒美京平作品ではなかろうか、と思ったが、先例はあった…忘れた頃に取り上げると思いますが…「ギター子守唄」は原曲の感触を生かしつつ、よりカラフルなアレンジ。かなりマイクに近づけての鍵ハモの響きがリアルだ。音数が少ない分、各楽器の個性が際立った録音は、さすがに60年代東芝の音という感じ。