黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1972年、今日の1位は「京のにわか雨」

東芝 TP-7647~8 

今宵踊らん デラックス・ダブル

発売: 1972年

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ジャケット+盤

A1 虹をわたって (天地真理) 🅴

A2 哀愁のページ (南沙織) 🅵

A3 初恋のメロディー (小林麻美)

A4 京のにわか雨 (小柳ルミ子) 🅷

A5 芽ばえ (麻丘めぐみ) 🅴

A6 陽のあたる場所 (奥村チヨ)

A7 どうにもとまらない (山本リンダ) 🅲

B1 夜汽車 (欧陽菲菲) 🅵

B2 狂わせたいの (山本リンダ) 🅱

B3 24000回のキッス (ゴールデン・ハーフ)

B4 風の日のバラード (渚ゆう子) 🅳

B5 緑の太陽 (山口いづみ)

B6 さよならをするために (ビリー・バンバン) 🅲

B7 旅の宿 (吉田拓郎) 🅵

C1 ゴッドファーザー・愛のテーマ (ニーノ・ロータ) 🅵

C2 ひとりじゃないの (天地真理) 🅹

C3 サルビアの花 (早川義夫) 🅲

C4 終着駅 (奥村チヨ) 🅳

C5 恋の追跡 (欧陽菲菲) 🅶

C6 陽はまた昇る (伊東ゆかり) 🅲

C7 ママに捧げる詩 (ニール・リード)

D1 瀬戸の花嫁 (小柳ルミ子) 🅺

D2 別れの朝 (ペドロ&カプリシャス) 🅴

D3 悪魔がにくい (平田隆夫とセルスターズ) 🅲

D4 ちいさな恋 (天地真理) 🅴

D5 純潔 (南沙織) 🅷

D6 待っている女 (五木ひろし) 🅲

D7 ふりむかないで (ハニー・ナイツ) 🅱

演奏: 奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ

編曲: 岩井直溥

定価: 3,000円

 

本ブログ2度目の登場である『今宵踊らん』は、72年の歌謡ヒット(「ママに捧げる詩」も、受け方としてはほぼ歌謡曲だし)に重点を絞りダンス音楽化。何せ、アルファベット表示(念のためですが、当ブログで何ヴァージョン目の登場であるかを明記したシンボルで、瀬戸の花嫁はなんと11ヴァージョン目ということになる!)を見ただけでも明白ですが、当時の歌無歌謡盤の常連であるエヴァーグリーン曲のオンパレードで、故にコンセプト的にはわかりやすい方。よりグローバルに視野を広げて、「ハイウェイ・スター」とか「天国への階段」とか聴きたかったなんて、野暮なことは言いません。77年以降のリリースになると、そんな楽しみ方の方に重点が行くわけですけど。

例によって黄金律に則った、いかにも「さあ踊ってください!」なアレンジだけど、やはり原曲の魅力がある程度生きているところはこの時代ならではのアドヴァンテージ「哀愁のページ」にしたって、一部歌無盤のようなずっこけ要素がない。演奏の足場が不安定だと、安心して踊れないからね。夢見心地で二人肩を寄せ合い踊りながら、ああ本当まじでいい曲だな、って思っちゃうわけです。筒美ファンにはたまらない「初恋のメロディー」がそれに続くわけだから、余計必殺。曲の良さがさらに引き立つアレンジです。かと思えば、「芽ばえ」はタンゴ化して原曲のときめき性をうっちゃちゃってる。でもちゃんと、曲の良さは生きているし。狂わせたいの」「恋の追跡」などのロック・ビートの効いたアレンジは、ワーナー・ビートニックスと並べても遜色ないし、「さよならをするために」「旅の宿」あたりの豪快なぶっ壊しぶりも、一旦ステップを踏んでしまうと「これでよかったんだ」と思うしかないし、これこそがこのシリーズの「思う壺」。このまま絶望の淵まで踊りながら沈んでいきそうなサルビアの花」があれば、無邪気に踊ってるうちに「純潔」なんてどうでも良くなってしまいそうなラテン風味の「純潔」もあり。まったりしたジャジーなアレンジだけど、「待っている女」の間奏はちゃんと再現してるの偉いよ。

ほぼ全曲、原曲通りの尺で演奏され、当時の色をゴージャスに伝えてくれる、歌無歌謡アルバムとしても上出来の2枚。ただ、この「エロサーフズ・アップ」的、当時のゴールデン・サウンズと同一コンセプトに傾いたジャケが…当時このアルバムを求めてた層にポジティヴアピールできてたのか心配になる…