黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日はあがた森魚さんの誕生日なので

キング SKM-1249

Now Hit Best 10 vol.1 漁火恋唄

発売: 1972年

f:id:knowledgetheporcupine:20210910211421j:plain

ジャケット

 

A1 漁火恋唄 (小柳ルミ子) 🅲

A2 女のみち (宮史郎とぴんからトリオ) 🅶

A3 同級生 (森昌子) 🅱

A4 さよならは突然に (ザ・ピーナッツ)

A5 あなたに賭ける (尾崎紀世彦) 🅱

B1 喝采 (ちあきなおみ) 🅲

B2 悲しみよこんにちは (麻丘めぐみ)☆ 🅲

B3 狂わせたいの (山本リンダ)☆ 🅲

B4 生まれかわれるものならば (いしだあゆみ)

B5 清怨夜曲 (あがた森魚)

演奏: はらだたけしとそのグループ

編曲: 小町昭、川上英一(☆)

定価: 1,200円

 

「はらだたけしとそのグループ」名義は、通販のボックスセットでまるごと演奏した盤が出ていたり、やたら作品数が多いのだけど、その割に全容が掴みづらい。サウンド的に妙な方向を向いているわけではないし、短時間でちょちょっと仕事をこなせる職人集団というイメージはある。キングだと、どうしても寺内タケシの印象が強くなるので、影に隠れてしまうのもしょうがないが。

こちらは72年暮あたりのヒット曲をスピーディに届ける、1200円で10曲というシリーズの第1弾。よって、片面の演奏はあっという間だけど、音質的には安定感がある。まず耳を捉えるのは「女のみち」。一聴してオリジナルに忠実な淡白な演奏をしてそうだけど、ピアノとオルガンが醸し出す雰囲気が、意外にも「ダンスホール風味」。6thコードを多用した後者の演奏が、まさしくそんな感じで、場末感はあるものの各楽器がちゃんと響いているのが、さすがにプロの仕事。これにジャマイカを感じてしまうと、もはや末期症状としか言えないか…解釈によってはレゲエ色が浮き彫りになってもおかしくない喝采は、逆に意図的にそっちに向かうのを避けているような出来。自社アドヴァンテージゆえに取り上げられた「さよならは突然に」も小気味よく、気持ちよく揺れる演奏。B面にはもっとびっくりの自社推し枠「清怨夜曲」がある。この曲が歌無盤で取り上げられたという事実自体驚異的だけど、「赤色エレジー」の次だけに、期待感故ではあろう。