黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は井上大輔さんの誕生日なので

ユニオン UD-1002

ゴールデン・テナー・サックス

発売: 1967年

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ジャケット

 

A1 君こそわが命 (水原弘) 🅳

A2 ブルー・シャトウ (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅱

A3 知りたくないの (菅原洋一) 🅱

A4 つれてって (園まり)

B1 新宿ブルース (扇ひろ子) 🅱

B2 夜霧よ今夜も有難う (石原裕次郎) 🅳

B3 小指の想い出 (伊東ゆかり)

B4 恍惚のブルース (青江三奈) 🅲

演奏: チャック・ウイリアムズ楽団

編曲: 無記名

備考: 45回転

定価: 1,300円

 

70年あたりまでは、歌無歌謡界でもアルバムと同じ位、17cm盤に33回転で4曲ないし6曲収録した「コンパクト盤」(EP)が重宝されており、特にポリドールの6曲盤は「アルバムなんて高くて買えない」「持って帰るには勇気が要る」層にアピールしたが、長時間演奏という「雰囲気作り」上重要なメリットがない分、主流にはなり得なかった。アルバムの抜粋という意味合いが大きく、EP独自の収録曲などあっても稀だろう(歌手のリリースになると、時折見受けられたが)。

音質的デメリットというEP最大の難点を逆転の発想で解決したのが、30cmのレコードを45回転でかける、いわゆる「ミニ・アルバム」(その言い方が一般化したのは、寧ろ80年代になってからである)。45回転で音質重視といっても、33回転盤並みに曲を突っ込むと意味がないし、この発想はどっちかと言うとジャズ向けと言える。当然の如く、ポピュラーのインスト盤にも試験的に取り入れられ、テイチクやフィリップスに何枚かのレア盤が残されているが、これはそのうちの1枚。

テイチクの洋楽レーベルだったユニオンからアルバムを既に3枚出していた、チャック・ウィリアムズ楽団の演奏を抜粋しての、ミニ・ベスト的内容。同じくユニオン所属だったギタリスト、エディ・プロコフスキーの正体は既に割れており(あの人ですよ)、このチャックの中の人も名うてのサックス・プレイヤーだった可能性があるが、なるほど日本人好みのディープなフレージングを得意としている。特に「新宿ブルース」のエンディングで聴ける執拗なプレイは、西洋的なセンスでは考えられない。ムーディで小粋なバッキングが中心になっているが、中でも「つれてって」のワウイー・ザウイー感溢れるサウンドに耳が止まる。68年以降、大ヒットから遠ざかる園まりだが、歌無歌謡界ではコンスタントに愛され、「こんな曲も歌ってたんだ」と再認識させられる。