黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日はちあきなおみさんの誕生日なので

クラウン GW-5185

知床旅情・歌舞伎町の女 魅惑のテナー・サックス・ムード

発売: 1971年4月

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ジャケット



A1 歌舞伎町の女 (野村真樹)

A2 無駄な抵抗やめましょう (ちあきなおみ)

A3 望郷 (森進一) 🅲→6/14

A4 止めないで (いしだあゆみ)

A5 悲しい女と呼ばれたい (日吉ミミ)

A6 めまい (辺見マリ) 🅰→6/14

A7 愛でくるんだ言訳 (安倍律子) 🅰→6/14

A8 知床旅情 (加藤登紀子) 🅳

B1 女の意地 (西田佐知子) 🅲→6/14

B2 花嫁 (はしだのりひことクライマックス) 🅲

B3 すべてを愛して (内山田洋とクール・ファイブ) 🅱→6/14

B4 美しく燃えて (小川知子)

B5 愛の怖れ (菅原洋一)

B6 おんなの朝 (美川憲一) 🅱

B7 生きがい (由紀さおり) 🅳

B8 女は恋に生きてゆく (藤圭子) 🅱→6/14

演奏: まぶち・ゆうじろう’68オールスターズ

編曲: 福山峯夫

定価: 1,500円

 

丹念な史実調査により更新スケジュールを組んでいる「黄昏みゅうぢっく」も、初期の頃は詰めが甘く、「どうして?」みたいなテーマを設定することもしばしば。ネタが増えたり、訃報によるお悔やみエントリが出たりする度にある程度見直しを行い、おかげで相当無駄を省くことができたのですが。ここだけの話、この盤は本来5月6日「コロッケの日」に語る準備をしていました(汗)。結局色々な思惑が絡み、もっと相応しい日に移動するに至ったのですが、ほんとちあきファンの皆様すみません…ついでにザ・タイガース・ファンの皆様にも(理由は5/6の項を参照)

というわけでクラウンの超王道シリーズ、真の黄昏に誘うまぶち・ゆうじろうのサックス・ムードですが、のっけから「歌舞伎町の女

ですよ。「王」はないですから(爆)。野村真樹盤もオリコン33位まで行ってるので、決して弱い曲ではないけれど、1曲目としては地味かな。まぁ、椎名林檎の曲をまぶちサウンドで料理してるのを想像するのも楽しい。こういう場末ムードは、意外にも21世紀初頭あたりの、小柳ゆき中島美嘉平井堅の曲にもしっくりきたりするかもしれません。ここで聴けるような、地味ながらさりげなく暴れるベース、堅実かつパワーを維持するドラム、チージーなオルガンなんて編成で。そう、全然余計な音がない、これだけの楽器を揃えてちょちょいな演奏なんだけど、こうじゃなきゃだめってムードに溢れてる盤なんですよ。こういう演奏なら、いっそライヴでもできるんでは、聴いてみたいって気もするけれど、演奏者の立場に立ってみたら複雑な気分だろうな。目の前で何が起こるかわからないし。せいぜい許されるなら、踊り子が踊る位のものでしょう。ゆえに、これはレコード上でのみ可能な表現世界なわけです。長距離ドライヴァーのためのテープメディアも含めて。

この編成が生きているベストトラックには、敢えて「めまい」を推しておこうと思います。レア・グルーヴにはなり得ないノリだけど、不思議と腰に来る響き。間奏でいきなり疾走モードに入るのもナイス。オリジナルの妖艶な誘惑ぶりが、しっかり演奏に置き換えられています。まぶち・ゆうじろう名義でこの種のサウンドが楽しめるものは、70~71年の盤に集中してることを、忘れずに触れておかねば。時代によってスタイルが変化するのは、王道シリーズの宿命です。でもやっぱ、知床旅情「花嫁」は、ユニオン盤の破壊的な演奏が恋しくなっちゃいますね。