黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は小田和正さんの誕生日なので

RCA RHL-6003 

ニューミュージック・スペシャ

発売: 1981年

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ジャケット



A1 ルビーの指環 (寺尾聰) 🅱

A2 守ってあげたい (松任谷由実)

A3 Yes-No (オフコース)

A4 愛を描いて -Let's Kiss The Sun- (山下達郎)

A5 去りゆく夏 (サーカス)

A6 パープルタウン (八神純子) 🅱

A7 いとしのエリー (サザンオールスターズ) 🅳

B1 黒のクレール (大貫妙子)

B2 恋のマジックトリック (八神純子)

B3 愛は風まかせ (五十嵐浩晃)

B4 ジェラシー (井上陽水)

B5 恋するカレン (大滝詠一)

B6 RIDE ON TIME (山下達郎)

B7 Special Delivery -特別航空便- (竹内まりや)

演奏: 斎藤英美 (エレクトーン)

w/ Masaharu Takashima (ギター)、Shiro Ito (ドラムス)、Eiji Matsushita (ベース)

編曲: 斎藤英美

定価: 2,300円

 

エレクトーン界の最重鎮、斎藤英美御大が果敢に臨む、最早歌のないシティポップ・カバー集と呼んでも平気な一枚。何せ81年だけあり、やわなサウンド作りになっていない。サポートメンバーも基本的ロックバンド編成に抑え、完全にフュージョン化しているし、適当にインプロする訳でなく、しっかり細部まで練られたバンドアレンジで、決して教養レコード色を感じさせない。ただ、郊外のおしゃれな喫茶店で流れるよりは、トレンディな水着を着たギャルが溢れるプールで流れた方がお似合いのサウンドである。

のっけのルビーの指環はオリジナルのアレンジを生かしつつ、思いっきり攻めに出まくっている。いかにもオルガンという感じの音色を繰り出しながら、所々モジュレーションを派手にかましてきて80年代色濃厚。間奏で唐突にモーツァルトの「交響曲40番」を奏で始めるのがやばすぎ。ベテランならではの芸当だ。「守ってあげたい」はラブリーな感触を保ちながら、意外にも飛ばし気味の演奏。「Yes-No」はリズム隊の演奏が単純化してる感もあるけれど、当時のオフコース乙女が参考にしそうな親しみやすいタッチ。いとしのエリーは逆説的に下世話さが浮き彫りになってる印象。

さて、当時は立派な「自社推し枠」というか、同じレコード会社内でもほぼ干渉なかったと思われる山下達郎大貫妙子竹内まりやの曲だが…いずれも無難というか、決してずっこけた演奏ではない故、ここでも浮いてないけれど、この演奏で曲の主観が伝わるのかどうか、読みづらい…ただ、骨抜きシティポップとか言ってチヤホヤしちゃいけないのは確実。演った人にはリスペクト、ですよ…このレコだって、100円で手元に来ましたから。但し、付属物(帯参照)が完全に欠けてるし、盤そのものも相当酷使された形跡があるんで。きっと、エレクトーンを溺愛した人の所有物だったんでしょう…

っても、派手にシンドラムをフィーチャーして相当アゲアゲな解釈をしている「恋するカレン」にだけは、やっぱオブジェクションしたいところでありますが…16歳の乙女がこういう演奏をしてるのなら、「よくやったね」って言ってあげたいですけど(瀧汗)。このメンツの中に五十嵐浩晃の曲を選んでるところは買いだと思いますよ。この人はもっとちゃんと再評価されなきゃいけない。

 

(歌無フォークと同列にするのは避けたい1枚だけど、わざわざ「シティポップ」カテゴリーを作るわけにもいかないので、便宜上「フォーク/NM」に入れておきます。もっとも、9月6日の更新までは単なる「フォーク」カテゴリーでしたが…)