黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は春日八郎さんの誕生日なので

Rich RE-203

なつメロ大行進 

発売: 197?年

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ジャケット



A1 明治一代女 (新橋喜代三) 

A2 別れの一本杉 (春日八郎) 🅰→4/28

A3 旅笠道中 (東海林太郎)

A4 裏町人生 (上原敏・結城道子)

A5 並木の雨 (ミス・コロムビア)

A6 君こそわが命 (水原弘) 🅱→4/28

A7 流転 (上原敏)

A8 名月赤城山 (東海林太郎)

B1 くちなしの花 (渡哲也) 🅲→4/28

B2 命かれても (森進一) 🅰→4/28

B3 年上の女 (森進一) 🅱→4/28

B4 雨に咲く花 (井上ひろし)

B5 波浮の港 (佐藤千夜子)

B6 江の島エレジー (菅原都々子)

B7 連絡船の唄 (菅原都々子)

B8 島の船唄 (田端義夫)

 

演奏: インペリアル・サウンド・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 1,400円

 

ジョン・レノンの誕生日…ですけど、目ぼしい歌謡関係の出来事がちゃんと確認されたので、それに沿った内容でいきますね。で、引っ張り出してきたアルバムが、『なつメロ大行進』。だって、限られるじゃないですか。春日八郎御大のヒット曲をカヴァーした歌無盤なんて。リアルタイムものを掘ってくるわけにいかないし。そんなわけで、タイトル通りの1枚でありますが、発売元のRichなる処は例によって、エルム傘下の訳わからないレーベル。発売年度も読めないのだが、この盤の10番後にはいわゆる「パチ洋楽」のアルバム『ソウル&ポップス・ヒットパレード』をリリースしており、何と「ホテル・カリフォルニア」(抱腹絶倒もの)や、堂々たる日本語歌唱で歌い上げているクイーンの「手をとりあって」がカヴァーされているので、77年前半のリリースであるのは確実(ジャケットだけでも載せたいけれど、これは自粛必須もの…汗)。よって、この盤がそれより前のリリースなのも確実とはいえ、74年作品「くちなしの花」まで取り上げられているのが不条理…まぁ、これもエルム道だな、ということで。

別れの一本杉」は、4月28日に取り上げたCamel盤『昭和演歌』と同テイクで、他にも4曲、その盤にも使いまわされた曲が確認されたが、これはエルムあるあるなので敢えて不思議がる必要もない(爆)。他の曲も全て、70年代になってから録音された音源なのは確実で、統一されたまったりとした流れの上に展開されている。ノスタルジックなオーケストレーションの奥底に構える口琴(歌無歌謡ではそれこそ、冗談音楽的ニュアンスが求められるケース以外での使用例はほぼ皆無)に思わず耳が止まる「明治一代女」でつかみはOK。突然、場末のクラブハコバンのような演奏に転じる「裏町人生」には、やっぱり70年代ノリの方が親しめるなという思いが湧き立つ。テンションコードの入れ方とか、ピアノの奔放な演奏スタイルなど、実に洋楽的だし。かと思えば、「並木の雨」は完璧にムード歌謡と化している。「島の船唄」はベースだけゴリゴリいっていてこれも妙なバランス感。こんな演奏が、「わたしの彼は左きき」や「心もよう」の合間を縫って流れてくるのが、理想の昭和歌謡酒場なんです。ジャケットも素晴らしい。いかにもパチ臭いけど、こういうのの方に安堵感を感じます、クラウンやポリドールのジャケより(汗)。