黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1969年、今日の1位は「人形の家」

テイチク SL-1303

クレイジー・パーカッション タヒチアン・リズムによる人形の家

発売: 1969年12月

f:id:knowledgetheporcupine:20211019050204j:plain

ジャケット

 

A1 人形の家 (弘田三枝子) 🅵

A2 銀色の雨 (小川知子) 🅲

A3 涙でいいの (黛ジュン) 🅲

A4 今日からあなたと (いしだあゆみ) 🅱

A5 星空のロマンス (ピンキーとキラーズ) 🅲

A6 雨に濡れた慕情 (ちあきなおみ) 🅲

B1 バラ色の月 (布施明) 🅲

B2 ローマの奇跡 (ヒデとロザンナ)

B3 いいじゃないの幸せならば (佐良直美) 🅴

B4 何故に二人はここに (Kとブルンネン) 🅱

B5 まごころ (森山良子) 🅳

B6 悲しみは駆け足でやってくる (アン真理子) 🅵

演奏: クレイジー・ニュー・サウンズ・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 1,500円

 

歌無歌謡の深い闇を探っていると、タイトルを見ただけで「一体これは何なんだ」と色めき立ってしまうレコードに出くわす事がある。そんな一枚がどっかから姿を現さないかなとときめきながら、特にこの2年近くの間電脳空間を彷徨っていたのだけど、いざ出てきたら我を忘れるんですよね…そんなわけで、今日紹介する盤は過去最高価格で買った歌無歌謡アルバムです。送料を含めると定価の2倍を軽く越える…まぁ、その位が限度ではあるんですけど。

ドラムならまだ解るとして、「パーカッション」を打ち出した歌無歌謡レコードは珍しいし、その上「クレイジー」ときた。一体どうクレイジーなのか…「人形の家」に針を落とした途端、始まる狂乱のリズムの応酬。フリーフォームな感じでそんな演奏が1分近く続いた後、やっと本編がスタートする。普通にジャズ・ロック色濃い演奏(ギターはちょっと好夫っぽいが、恐らく別人だろう)が続く中、後方でコンスタントにポコポコ言いまくり。グルーヴ感を高めるというより、脳髄を微妙にくすぐる感じの使われ方だ。カルト盤として密かに人気を得、この頃ユニオンから再発盤が出ていたチャイノの「アフリカ打楽器隊」を多少は意識した演奏かもしれないが、トロピカル感覚はそれほど感じられない。「涙でいいの」「まごころ」など、ムーディな感覚を強める役割に留まった曲もあるが、殆どの曲でオリジナルにない喧騒感の素としてパーカッションが配されており、中でも過剰なのは「今日からあなたと」だ。大丈夫なのか、この解釈で一体…ブラスも直線的に吠えまくり。「何故に二人はここに」も、途中とってつけたように爆走パートが挟まれる異色の解釈。「バラ色の月」が、原曲のポップさと最もバランスが取れたアレンジになっている。

ここまでの異色盤なのに、なぜかアレンジャーのクレジットがない。「悲しみは~」の編曲者として寺岡真三氏の名前があるが、オリジナル盤からコピペしちゃいけないとこまでコピペした結果と思われる。ギターのアンサンブルなんかには、山倉たかし色が濃厚に出ているの思うのだが。そして、ジャケットのモデル。濃厚に厚化粧を施してはいるけど、まさかこれ、涼川真里さんじゃ…同じ写真が色彩度を落としつつ、4面全てに使われており、練られ不足のまま市場に出されたのではと憶測される。まず企画が暴走したみたいな1枚ではあるけど、故に憎めない、そんなアルバムです。