CBSソニー CULT-29002
子供のエレクトーン~ちっちゃな恋人たちのコンサート~
発売: 1970年
A1 老人と子供のポルカ
A2 エーデルワイス 🅲
A3 あしたのジョー
A4 かっこうワルツ
A5 象のしわ
A6 ふしぎな遊園地
A7 ぼうが一本あったとさ
B1 ちっちゃな恋人 🅱
B2 子象の行進
B3 ヴァイオリンを弾こう
B4 わんぱくマーチ
B5 レッツ・キス・ジェンカ
B6 おもちゃの兵隊の行進
B7 ともしびのサンバ
演奏: 佐藤登美子
編曲: 菊地雅春
定価: 1,500円
70年代初頭のポピュラー文化は、今よりずっと「子供達」に優しかった。自分がその恩恵を受けまくったとはとても思えないけど、ヒット・チャートには幼い子供達の歌が幾つか食い込んでいたし、アニメ、というか「テレビまんが」の影響力は今より遥かに「開かれて」いた。生活層によっちゃ、最新鋭の「文明の利器」が子供たちの好奇心をそれなりにくすぐることも見受けられたし。このレコードに刻まれたのは、そんなイノセントな時代の長閑な光景。
子供たちのエレクトーン演奏の教材としても、子供たちを喜ばせるための大人たちの実演指南書としても使えるレコード。さすがに譜面は出版社から別売となっており、このレコードはあくまでも「参考書」としての位置づけだったのだろう。片方のチャンネルにエレクトーンが固定し、もう片方にはパーカッション(演奏者クレジットなし。「象のしわ」に声らしきものが入っているが)によるリズムが配されており、練習用にも優しい。当時の子供カルチャーを意識した解りやすい選曲で、一通り聴いたら楽器が何であれ、実践欲が掻き立てられる。「あしたのジョー」なんかも、原曲通りティンパニーを使ってはいるけれど、演奏自体はコンパクトにまとまっているし、演り手がどう色を加えればいいかという自由度を残したアレンジになっている。対照的に「ぼうが一本あったとさ」はかなりのプログレ化。ラスカルズの「ユー・ベター・ラン」みたいに始まるが、テンポチェンジを経て後半は凄い事になっている。弾きながらトーン変化を行いまくってるし、子供だったら幻惑されそう。この通り演るより、これみたいに自由に演っていいよと諭されているようだ。B面には「子象の行進」や「わんぱくマーチ」、「3分クッキング」のアレ「おもちゃの兵隊の行進」など、聴けばああ、あれかと納得する曲が並ぶ。「おもちゃの~」の最後のグリッサンドなんか、ポルタメント機能付のモデルだったらそれを使った方がさまになるだろうけど(もしくはスライドホイッスルを使うとか)、それをしないところもいかにも庶民向けだ。やるの難しいですけどね。「ふしぎな遊園地」と「ともしびのサンバ」は監修者・菊地氏のオリジナル。本ブログではポータサウンドのアレに続く、2回目のオリジナル登場だ。後者はスリリングな展開でなかなかのいい曲。
弾き手、佐藤さんの親しみやすい性格が現れた演奏もとにかく優しい、万博時代の無邪気さを投影してくれる1枚。なお、70年といえばその年の10月、歌無歌謡フィールドにも『ちびっこポップス大行進/ちびっこパーティー』(ALS-4539)なる、子供が歌った曲だけを取り上げた盤が残されており、これは我がトップウォンツの1枚。送料・手数料込みで4桁以内ならいくらでも出します。