黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1974年、今日の1位は「よろしく哀愁」

ミノルフォン KC-5001~2

最新ヒット歌謡ベスト30

発売: 1974年12月

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ジャケット

A1 みれん (五木ひろし) 🅳

A2 愛の詩を今あなたに (布施明) 🅱

A3 激しい恋 (西城秀樹) 🅱

A4 ポケットいっぱいの秘密 (アグネス・チャン) 🅰→7/29

A5 追憶 (沢田研二) 🅲

A6 あなた (小坂明子) 🅴

A7 君は特別 (郷ひろみ) 🅰→7/29

A7 上級生 (フィンガー5)

B1 北航路 (森進一) 🅲

B2 冬の駅 (小柳ルミ子) 🅱

B3 恋は邪魔もの (沢田研二) 🅲

B4 浜昼顔 (五木ひろし) 🅰→7/29

B5 灰色の瞳 (加藤登紀子長谷川きよし) 🅱→7/29

B6 さらば友よ (森進一) 🅲

B7 夫婦鏡 (殿さまキングス) 🅱→7/29

C1 ふれあい (中村雅俊) 🅱

C2 美しい朝がきます (アグネス・チャン)

C3 恋のアメリカン・フットボール (フィンガー5) 🅰→7/29

C4 よろしく哀愁 (郷ひろみ)

C5 グッドバイ・マイ・ラブ (アン・ルイス) 🅱→7/29

C6 積木の部屋 (布施明) 🅱

C7 私は泣いています (りりィ) 🅳

C8 理由 (中条きよし) 🅴

D1 おんなの運命 (殿さまキングス) 🅳

D2 旅愁 (西崎みどり) 🅲

D3 くちなしの花 (渡哲也) 🅷

D4 おかあさん (森昌子)

D5 ひとり囃子 (小柳ルミ子) 🅰→7/29

D6 うすなさけ (中条きよし) 🅱→7/29

D7 二人でお酒を (梓みちよ) 🅴→7/29

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ

編曲: 京健輔、土持城夫

定価: 2,000円

 

ミノルフォン30曲で2000円という美味しいシリーズ『最新ヒット歌謡』の第1作。このポリシーで結局、78年まで突き進むのだが、初期の盤はジャケット的にも地味で(せっかく猫を抱いてるのに、モヤモヤした写真だ)、一連の「小梅ちゃんジャケ」で強烈な個性を打ち出すまでの試走期間という感じだ。もちろん、原曲の構成を生かしてのつき合いやすさは、前身のKB品番で出た3作から受け継がれており、安心のブルーナイト・クォリティ。原曲の完全なる再現を期待すると肩透かしに会うのも、逆説的な魅力の一つ。「激しい恋」のイントロのあの音をギターで出そうとしているのも、その一例だし、「追憶」は妙にドラマチックなサウンド作りの上に、オーボエとフルートがユニゾンでメロディーを奏でているのが不思議な味を醸し出す。ファンを戸惑わせた「恋の大予言」ではなく、両A面指定ながら隠れた名曲として玄人好みの域に達している「上級生」を選んでいるのはポイントが高い。「ドゥ・アイ・ラヴ・ユー」歌謡ですな。でかい波が来るかなと期待して聴いてたら、「ふれあい」の後ろにさりげなく控えるリコーダーが。「美しい朝がきます」では、木琴が愛らしい音を添えている。

8月リリースされた1枚もの『’74最新ヒット歌謡』から持って来られた曲も10曲もあって、1800円出してそちらを買った人の嘆きも聞こえてきそうだが、「隣りの二人」みたいにそっちにしか入ってないレア曲もあるし、逆にこちらでしか聴けない曲もあるし、術中にはめられた…と言いながら楽しむしかないです。それにしてもラスト3曲を筆頭に、平尾昌晃の力は侮れません。

 

最後に…ささやかながら、20日お亡くなりになられた川口真先生のご冥福をお祈り申し上げます。本盤の収録曲では「積木の部屋」の作曲及びオリジナル編曲を担当されましたが、まさに時代の音を作った一人です。歌無歌謡で多少軽量化されたとはいえ、黄昏みゅうぢっくの底辺を流れるノリの数々を提供された業績は見逃せないものです。