黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1970年、今日の1位は「黒ネコのタンゴ」(2週目)

ポリドール MR-8041~2

ドラム! ドラム! ドラム! ベスト28 

発売: 1970年12月

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ジャケット

 

A1 何があなたをそうさせた (いしだあゆみ) 🅳

A2 手紙 (由紀さおり) 🅳

A3 走れコウタロー (ソルティー・シュガー) 🅲

A4 私生活 (辺見マリ) 🅴

A5 ロダンの肖像 (弘田三枝子) 🅳

A6 X+Y=LOVE (ちあきなおみ) 🅳

A7 貴方をひとりじめ (和田アキ子) 🅲

B1 生きがい (由紀さおり) 🅴

B2 白い蝶のサンバ (森山加代子) 🅳

B3 ドリフのほんとにほんとにご苦労さん (ザ・ドリフターズ) 🅱→7/30

B4 時は流れる (黛ジュン) 🅲

B5 くやしいけれど幸せよ (奥村チヨ) 🅱→7/30

B6 僕の中の君 (ベッツイ&クリス) 🅱

B7 恋人 (森山良子) 🅵

C1 嘘でもいいから (奥村チヨ) 🅱

C2 愛は傷つきやすく (ヒデとロザンナ) 🅲

C3 京都の恋 (渚ゆう子) 🅴

C4 経験 (辺見マリ) 🅱→7/30

C5 あなたならどうする (いしだあゆみ) 🅲→7/30

C6 初恋の人に似ている (トワ・エ・モア) 🅲

C7 四つのお願い (ちあきなおみ) 🅱→7/30

D1 昨日のおんな (いしだあゆみ) 🅳

D2 黒ネコのタンゴ (皆川おさむ) 🅲

D3 恋狂い (奥村チヨ) 🅱

D4 花のように (ベッツイ&クリス) 🅲

D5 愛のフィナーレ (菅原洋一) 🅱

D6 喧嘩のあとでくちづけを (いしだあゆみ) 🅱

D7 私が死んだら (弘田三枝子) 🅱

 

演奏: 原田寛治 (ドラムス)/’70オールスターズ

編曲: 前田憲男

定価: 2,000円

 

70年発売された「黄金のドラム」シリーズの4枚を凝縮してのベストコレクション。とにかく聴く方にも体力消費を強要してくる、全編走りっぱなしの2枚組ではあるが、手持ちの盤が残念ながら、ゆわんゆわんに反っていてまともに再生してくれない…特に各面1曲目がめちゃくちゃ飛びまくり、ただでさえぶっ飛んだドラムサウンドから規則正しいリズムの要素を剥奪してしまう。2枚組のどちらの盤もそんな感じで、経年劣化というより元からプレスミスという可能性も。慌ただしいレコード生産業故、時折ダメプロダクトが市場に送り出されるのも仕方ないと思うけど、よりによってこのレコードとは。辛うじてまともに聴けそうな部分も、ダイナミックにドラムが爆走している故、再生装置に相当負担をかけかねない。

とにかく、いかなる曲であろうが容赦しないドラミングを盛り立てる過剰なアレンジ。特に走れコウタローのぶっ壊し方は痛快で、ザ・フーの「くもの巣と謎」に肉薄するレベルだし、「生きがい」「時は流れる」をここまで豪快に弄ぶヴァージョンは他にない。「僕の中の君」なんて無意識にパンク化してるし、「初恋の人に似ている」はまるでピンク・フロイド「神秘」と同化したようなシュールな世界。「花のように」で女性コーラスが爽やかな風を運んできても、ドラムソロによって一瞬で遮られてしまう。

ドラムの醸し出す過激さに浸りたい人にはもってこいのセットだけど、やっぱまともな盤で聴きたいところ…オリジナルの1枚ものを揃えるのが一番いいのだけど、ものによってはジャケットが際どすぎるので無駄に高値を読んでる可能性も。70年代中期のポリドール盤の傾向からすると、まだソフトではあるけれど(自分の好み的には75年あたりの盤に集中してます…汗)。

今月に入って、菅沼孝三、グレアム・エッジといった大御所ドラマーが次々に天国に呼ばれたけれど、その魂を弔うように鳴り響く最終曲「私が死んだら」を、餞に添えさせていただきたいと思います(これも川口真先生の曲…作詞家も歌手も昨年死んだ…合掌)。