黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は玉井タエさん(シモンズ)の誕生日なので

RCA JRS-9101~2

フォーク&ポップス・ギター・ヒット 

発売: 1972年5月

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ジャケット

 

A1 出発の歌 (上條恒彦六文銭) 🅲

A2 恋人もいないのに (シモンズ)

A3 河 (赤い鳥)

A4 だから私は北国へ (チェリッシュ) 🅱

A5 戦争を知らない子供たち (ジローズ) 🅲

A6 愛する人に歌わせないで (森山良子)

B1 おくれて来た少女 (シモンズ)

B2 なのにあなたは京都へ行くの (チェリッシュ)

B3 この広い野原いっぱい (森山良子) 🅵

B4 花嫁 (はしだのりひことクライマックス) 🅵

B5 若者たち (ザ・ブロードサイド・フォー) 🅵

B6 小さな日記 (フォー・セインツ) 🅳

C1 悪魔がにくい (平田隆夫とセルスターズ) 🅵

C2 別れの朝 (ペドロ&カプリシャス) 🅷

C3 北帰行 (小林旭) 

C4 星に祈りを (ザ・ブロードサイド・フォー) 🅲

C5 山のロザリア (ダーク・ダックス)

C6 あざみの唄 (伊藤久男)

D1 四季の歌 (いぬいゆみ) 🅲

D2 いつまでもいつまでも (ザ・サベージ) 🅲

D3 知床旅情 (加藤登紀子) 🅵

D4 北上夜曲 (和田弘とマヒナ・スターズ)

D5 遠くへ行きたい (ジェリー藤尾) 🅲

D6 今日の日はさようなら (森山良子) 🅱

 

演奏: 木村好夫とオーケストラ

編曲: 無記名

定価: 3,000円

 

好夫ギターとフォーク。果たして上手く噛み合うのだろうか、思い切り心配してしまうけど、テクニシャン故に全方向全世代にちゃんと対応してしまうのも、この時期のこの人の魅力の一つ。さりげないメロディこなしさえあれば、バックの音にしっかり溶け込んでいくし、それでいて個性をはっきり刻印する。そんな感じで貫かれる2枚組だけど、終盤に行くとあれっという展開になるのだ。大体、この流れを一つにまとめる役割を果たしたアレンジャーのクレジットがない。恐らく、ひとりの仕事ではないと思われるけど。

オープニングの「出発の歌」から、ピースフルなサウンドの最前列に堂々と構えるギターが主張する。特に色気を出したプレイをしなくとも、これだぞという存在感がまさに好夫ギターで、以下どの曲もそんな感じだ。あくまでも主流にとどまったまま、若々しさに目配せするような優しい視点が伺える。C面に行くと、冒頭2曲はむしろサービスのようなもので、3曲目から妙な方向へと導かれる。確かに、「北帰行」「山のロザリア」は、ギターのお兄さんを中心に焚き火を囲んでキャンプで歌われそうなスタンダードではあるけれど、一歩間違えたら「自衛隊に入ろう」さえ選曲されかねないアルバムに入っていていいのだろうか…前者や「あざみの唄」知床旅情などでは、好夫ギターの真髄と呼べる節回しが随所に登場して、ここまでの若々しさと異質の展開を誘発してしまっているし。逸早く取り上げた「四季の歌」は、後のクラウン・ヴァージョンなどにはない躍動感があって、むしろ異色の出来だ。やはり、最後の最後はキャンプの焚き火ムードで締め、になってしまうんですね。もう、あんな風に音楽が演れないのかなと、切なくなりそう。

歌無アルバムには引っ張りだこの浅井英雄氏によるライナーは、当時のフォーク事情をわかりやすく説明しているが、そんな中ここに取り上げられているアーティストと並んで、はっぴいえんどの名前が挙げられているのが興味深い。72年5月の段階で、ですよ…