黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その34: 日本のメロディー

マイパック DR-0018

日本の詩情

発売: 1974年?   

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ジャケット

 

A1 早春賦 🅱

A2 おぼろ月夜 🅲 

A3 花 (滝廉太郎) 🅴

A4 茶摘

A5 夏は来ぬ

A6

B1 虫のこえ

B2 紅葉

B3 赤とんぼ 🅵

B4

B5 冬景色 🅱

B6 冬の夜

 

演奏: 秋満義孝カルテット・ウィズ・フレンズ

編曲: 無記名

定価: 890円

 

いよいよ明日から12月…こんな季節の節目には、なぜか「日本のメロディー」を担ぎ出すのが一番はまる。というわけでマイパックにも残されていたそんな1枚。例によって、この企画のための録音なのか、既にあった音源を借りての制作なのか読めないのだが、さすが秋満さん、肩の力を抜きつつも中途半端では終わらない仕上がりになっているし、何せこのジャケット。さすがダイエー、売り方のツボをちゃんと熟知している。

3月からスタートして2月で終わるみたいな、1年の四季を描いた曲順になっているのだけど、全体の流れとしてはこれでいいという感じで、まさに春が訪れるという雰囲気でアルバムが始まるのも悪くはないなと(何せ『ナイアガラ・カレンダー』に慣れすぎてるもんで)。そのコンセプトにふさわしい効果音が所々に挿入され、しっかり作り上げられているのが廉価盤らしくない。随所でスインギーな展開に持っていきながら、こじんまりしたサウンドにまとめ上げているのも正解。ここまで6枚「日本のメロディー」を紹介しておきながら、ここでやっと登場する曲が半分以上あって、やはり「愛唱歌」の層の厚さは凄いなと思い知る。工夫を凝らしつつ単なるBGMに終わらせない手腕、という着眼点でこの種の盤を掘ると、まだまだ好盤に巡り逢えそうな予感はするし、逆に外れを引く可能性も大きいけど、まぁ反面教師にはできるだろうし、何せこの種の作品集を作りたいという野望は持っているので。昔のように、「女学生の友」のように青春に寄り添う存在に「愛唱歌」がなればと、願わずにいられない。それにしても、「夏は来ぬ」に挿入されている霧笛の音のピッチは変えて欲しかったというのが残念点。フランキー・フォードの「シー・クルーズ」で、わざわざテープのスピードを変えてピッチを合わせたという実話もあることだし。いや、そこまでトリッキーな考え方をする余裕はなかったのかも…。その割に「雪」のイントロに入っている風の音はワイルドすぎるのだが。