黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は岩久茂さん(青い三角定規)の誕生日なので

ミノルフォン KC-53 

‘72最新ヒット歌謡 SUMMER

発売: 1972年6月

f:id:knowledgetheporcupine:20211130051323j:plain

ジャケット

A1 待っている女 (五木ひろし)Ⓐ 🅳

A2 さようならの紅いバラ (ペドロ&カプリシャス)Ⓐ 🅳

A3 ふたりは若かった (尾崎紀世彦)Ⓑ 🅷

A4 瀬戸の花嫁 (小柳ルミ子)Ⓑ 🅼

A5 太陽がくれた季節 (青い三角定規) 🅵

A6 今日からひとり (渚ゆう子)Ⓑ 🅶

A7 ひとりごと (西真澄)Ⓐ

B1 あの人はいま札幌 (李朱朗)

B2 恋の追跡 (欧陽菲菲)Ⓑ 🅸

B3 別れの讃美歌 (奥村チヨ)Ⓑ 🅴

B4 この愛に生きて (内山田洋とクール・ファイブ)Ⓐ 🅱

B5 北国行きで (朱里エイコ)Ⓐ 🅳

B6 許されない愛 (沢田研二)Ⓑ 🅵

B7 あの鐘を鳴らすのはあなた (和田アキ子) Ⓐ 🅳

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ

編曲: 福井利雄Ⓐ、土持城夫Ⓑ

定価: 1,500円

 

いつの間にか12月になってしまいました…「黄昏みゅうぢっく」も遂に、最後の1/3に突入…というわけですが、語るべきネタが一通り揃って1年分のスケジュールが固まってからも、ネタの増加は止まらず(実際外に出てレコードを買ったケースは、その1割にも満たないのですが…汗)、特に7月と11月に夥しい量のブツが手元に迷い込みました。そんなわけで、今後の予定に劇的な変化が生じる可能性があります。少なくとも12月のうちに一つ、重要なお知らせをすることになると思いますが…いずれにせよ、自分内ではまだコロナ前のように開かれた状態に戻ったとは思えないし、歌無歌謡の沼を探り続けることにより、新たな道の開拓に繋がることを、もうしばらくの間は信じていたいと思います。

 

今日取り上げるのは、ブルーナイト・オールスターズ名義では3作目となる、72~73年にリリースされた「四季」シリーズの2枚目。ちなみに72年の「冬」はリリースされた形跡がないようで、その代わりに2枚組『最新ヒット歌謡ベスト30』(KC-7007~8)が10月に出ています。のちのKC-5000番台名シリーズに道を開いた記念すべき1作ですね。73年以降に全開となる、小気味よくも大胆なサウンド作りの完成途上にある音という感じで、付き合いやすいけど場末感もある。オープニングの「待っている女」を聴くと、自社曲故慎重にこなしてはいるけれど、オリジナルの藤本サウンドにある「棘」が欠けている感もあり、ちょっと寂しい。女性コーラスが爽やかな風をもたらしているけれど、藤本的なものとは異質だし。こうやって聴くと、もし藤本卓也が他の人の曲を素材に歌無歌謡のアルバムを手がけたら、どんなものができるかと妄想の一つや二つ、したくなってしまいます。まぁ、本人は「人の曲に構ってる余地なんかないよ」なんて言いそうですが。

対して、今回が13番目のヴァージョン登場となる瀬戸の花嫁は、いい感じでスケールダウンしつつ、オルガンの妙な音や、ちゃんとギターで出しているカモメ音などで、異国の世界に導いている。ユニークな選曲としては、「時間ですよ」の元祖マドンナ・西真澄のデビュー曲「ひとりごと」(一時はこのシングルを中古盤屋さんの「男性歌手・な行」コーナーでよく見かけた)と、韓国からの刺客・李朱朗のあの人はいま札幌」に注目。それぞれ、山下毅雄ベンチャーズの作品だ。徳間のダンレーベルは、アジア3人娘として李朱朗・方怡珍と、スタ誕韓国大会で見出されたシルビア・リーを推しまくってましたね。小気味よいバンドサウンドの中、ちょっぴり異色の「別れの讃美歌」で聴けるフルートと鍵ハモの絡みが耳を捉える。歌い尽くさないところもまた、歌無歌謡の醍醐味の一つ。