黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日はアン真理子さんの誕生日なので

東芝 TP-7386

夜と朝のあいだに エレクトーン・ヒット・パレード

発売: 1970年

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ジャケット

A1 人形の家 (弘田三枝子) 🅶

A2 夜と朝のあいだに (ピーター) 🅳

A3 あなたの心に (中山千夏) 🅳

A4 いいじゃないの幸せならば (佐良直美) 🅵

A5 昭和ブルース (ブルーベル・シンガーズ) 🅱

A6 土曜の夜何かが起きる (黛ジュン) 🅲

A7 あなたと生きる (小川知子) 🅱

B1 花と涙 (森進一) 🅴

B2 恋泥棒 (奥村チヨ) 🅴

B3 喧嘩のあとでくちづけを (いしだあゆみ) 🅲

B4 雨に濡れた慕情 (ちあきなおみ) 🅳

B5 悲しみは駆け足でやってくる (アン真理子) 🅶

B6 まごころ (森山良子) 🅴

B7 星空のロマンス (ピンキーとキラーズ) 🅳

 

演奏: クイン・ノート

編曲: 道志郎

定価: 1,500円

 

遂に初の単独ベストCDがリリースされ、静かに再注目を浴びているアン真理子さん。1曲だけのヒットじゃ窺い知れない幅広い魅力の持ち主でした。欲を言うと、移籍後の曲まで聴きたかったですが…改名前の「藤ユキ」時代の曲が4曲中3曲、既にCD化されていたのも驚きでしたが。再発CDというムーブメントは未だ息絶えていないし、まだまだ再発見されるべき音楽はいくらでもありますよ。歌無歌謡なんて、全体から見ればCD化された音源なんて、0.01%にも満たないですから(えっ、ジャンクヤードにこそ真価がって?そんなこと言えなくなる時代も夢じゃないよ…)。

そんなわけで、1曲だけだろうがCD化されて価値を高めたクイン・ノート再登場です。11月13日登場の『或る日突然』と異なり、本来の名義表記が復活し、アレンジャークレジットも真っ当なものになっている(!?)。が、やはり高橋レナの姿はありません。まぁ、当時の雰囲気作りに於いては、主役の存在感など二の次だったんでしょう。まったりとした昭和喫茶の雰囲気はやっぱり健在ですが、今作の特徴として、左と右のチャンネルに別々のオルガンの演奏がフィーチャーされていること。全編そのミックスで貫かれており、道氏が多重録音したというより、別々のプレイヤーを起用してバンドと一緒に一気に演奏したという可能性が高い。演奏全体に統一感を感じるのは恐らくそのためで、起用されたプレイヤーは道氏の愛弟子達ではないかという気がする。全体に慎重な演奏をしているからね。ポストレナを狙っていた乙女達かもしれないな…前作の随所を吹き荒れていた渦巻のようなグリッサンドは、今作では「雨に濡れた慕情」「悲しみは駆け足でやってくる」に大フィーチャーされている程度で、代わりにハープを多用して同じような効果を出しているケースが目立つ。いずれにせよ、華麗な乙女っぽいイメージを演出した響きという感じだ。どの歌無ヴァージョンを聴いても決して裏切らない「土曜の夜何かが起きる」はここでも素晴らしい出来。所謂「東芝三人娘」のいずれもなかにし礼/鈴木邦彦作品が3曲、足並み揃えて傑出している。これらの曲だけ、ドラムのキレが明らかに違うのである。やはり自社推し効果優先なんだな。