黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は舟木一夫さんの誕生日なので

コロムビア/山田書院 GES-3010 

ゴールデン・フォーク・アルバム

発売: 1969年

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ジャケット

 

A1 若者たち (ザ・ブロードサイド・フォー) 🅶

A2 悲しみは駆け足でやってくる (アン真理子) 🅷

A3 まごころ (森山良子) 🅵

A4 バラが咲いた (マイク真木) 🅲

A5 帰ってきたヨッパライ (ザ・フォーク・クルセダーズ)

A6 高校三年生 (舟木一夫) 🅱

B1 星空のロマンス (ピンキーとキラーズ) 🅴

B2 懐かしの人 (千昌夫)

B3 昭和ブルース (ブルーベル・シンガーズ) 🅲

B4 遠くへ行きたい (ジェリー藤尾) 🅳 

B5 たそがれの赤い月 (ジュディ・オング)

B6 愛ある限り (吉永小百合)

 

演奏: コロムビア・オーケストラ

編曲: 河村利夫

定価: 1,700円

 

舟木一夫さんの誕生日に引っ張り出したのが「ゴールデン・フォーク・アルバム」って…しかも代表曲の「高校三年生」収録ですよ。5月29日取り上げた、所謂「KISSアルバム」の同曲の解説にも「フォークのリズムを取り入れた」とあるし。日本でのフォークのイメージって、昭和38年の段階じゃどうだったんでしょうか。ディランはセカンド・アルバムを出した年で、日本への紹介は未だされてなかったし、学生フォークに関しても未だ静かな波という程度だったはず。ましてや高校生じゃね…ただ、この曲が確立したイメージがしばらく青春歌謡の雛形になった感はある。少なくとも昭和41年までは。ここで曲がり角がくるのですね。だからこそ、ここにこれを選曲したことには、何らかの意図があるのかもしれない。

ということで山田書院の「ゴールデン歌謡アルバム」の1枚。フォークの個性を活かすべく、随所に工夫を凝らしてシリーズの他の盤と趣きを変えている。オープニングの「若者たち」からして、他のヴァージョンとかけ離れた躍動感を打ち出してるようだ。大体、「これが青春だったのだな」という意味合いで、最後に持ってこられることが多い曲だが(というか、初出が66年の曲というのに、既に当ブログに7ヴァージョン出ているというのが異常)、こういう扱いも新鮮なものである。「悲しみは~」「まごころ」のようなリアルタイムの曲は、かえってまったりしたイメージから脱却していないが、フルートの響きに若々しさのダイレクトな投影を感じる。フォークということで強引に選曲されたと思しき「帰ってきたヨッパライ」がファンシーなアレンジでかえって滑稽。思いっきり実験したヴァージョンを聴きたかった気もするが。その後に問題の「高校三年生」を配したこと自体が過激な試みなのかもしれない。低い音混じりのフルートに恥じらいの味を感じる。B面の選曲に行くと、余計フォークなどどうでもいい方向に揺れて行くのだけど、「魅せられて」以前のジュディ・オングの曲の選曲はレアだ(大体その曲より12年前の曲ではないか)。最後の最後、小百合さんの青春アンセムで胸がスカッとするけど、その時には最早フォークの歌無盤を聴いてるという印象はなくなりますね…