黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1973年、今日の1位は「小さな恋の物語」

マイパック DR-0035 

歌謡ヒット・パレード

発売: 1974年 

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ジャケット

A1 恋のダイヤル6700 (フィンガー5) 🅴

A2 あなた (小坂明子) 🅶

A3 夜空 (五木ひろし) 🅶

A4 花物語 (桜田淳子) 🅳

A5 恋の風車 (チェリッシュ) 🅶

A6 襟裳岬 (森進一) 🅼

B1 魅せられた夜 (沢田研二) 🅵

B2 記念樹 (森昌子) 🅳

B3 しのび恋 (八代亜紀) 🅵

B4 小さな恋の物語 (アグネス・チャン) 🅳

B5 ときめき (麻丘めぐみ) 🅳

B6 愛の十字架 (西城秀樹) 🅴

 

演奏: TBSニュー・サウンド・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 890円

 

ダイエー・マイパックに少なくとも2枚残されている「リアルタイム最新歌謡」の歌無カヴァー盤の2つ目の方で、知る限りだとこれ以降シリーズ全体で2枚しかリリースされていないので、そろそろ潮時と悟っていたのでしょうか。超廉価盤のくせして、メジャーもこぞって取り入れていたノイマンのカッティングヘッドによる「ノンディストーションサウンド」をいきなり売りにし始めたのにも今更感があるが、確かにその前の「歌謡ヒット・パレード」(9月3日紹介分)に比べると遥かに安定したサウンド。但し、クレジット周りは完全に煙に巻いている。

トップの恋のダイヤル6700はノリがよく、カッティングヘッドの調子のよさに反してギターにはディストーションがたっぷり(笑)。手慣れたプレイという感じがしないのがいいし、間奏では地味にストリングスが敷き詰められて、まるでソリーナのような音質だ。こういう顔が見えない、でもがんばっている演奏を聴くとスカッとする。A面には純情たっぷりの花物語もあれば、もはや当ブログでは「メロトロン幻聴曲」の座を確立してしまっている2曲もありで、個性を見つけたくなるのは必至なのだが、あと一推し足りない印象。ストリングスのあしらい方がゴージャスではあるが。昨日問題の(故に愛しい)ヴァージョンを紹介したばかりの「記念樹」もそうだし。ソプラノサックスの音がなんとなくリコーダー的感触を編み出しているけど、「この樹の下で」のとこのメロディーが決定的に違っていて萎え。これは写譜した人の責任だろう。

ラスト3曲のアイドル展開に期待するしかないけど、「ときめき」の「チャチャチャ」の言い方があまりにもせこい(笑)。これはスキャットヴァージョンの圧勝だな。その分、「愛の十字架」が終幕感たっぷりに盛り上げてくれる。ジャケ写、内側の写真の方が遥かに魅力的なのだけど、こちらが可笑しさという点では載せる価値ありでしょう(笑)。890円天国の運命は儚かった…