黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は布施明さんの誕生日なので

キング SKK-532

愛して愛して 華麗なるトランペット・ムード Vol.2

発売: 1969年

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ジャケット

A1 愛して愛して (伊東ゆかり)Ⓐ 🅴

A2 粋なうわさ (ヒデとロザンナ)Ⓑ 🅳

A3 星のみずうみ (布施明) 🅱

A4 長崎は今日も雨だった (内山田洋とクール・ファイブ)Ⓐ 🅺

A5 くれないホテル (西田佐知子)Ⓐ

A6 夜明けのスキャット (由紀さおり)Ⓑ 🅹

B1 涙の中を歩いてる (いしだあゆみ)Ⓑ 🅵

B2 お気に召すまま (じゅん&ネネ)Ⓐ 🅴

B3 港町ブルース (森進一)Ⓑ 🅸

B4 恋の花うらない (ビリー・バンバン)Ⓐ 🅲

B5 京都・神戸・銀座 (橋幸夫)Ⓑ 🅲

B6 時には母のない子のように (カルメン・マキ)Ⓑ 🅻

 

演奏: 荒尾正伸 (トランペット)/オールスターズ・レオン

編曲: 大沢保郎Ⓐ、小谷充Ⓑ

定価: 1,500円

 

見事すぎる構図としか言えないジャケット。言われてみればトランペット、という不思議な視覚で音の世界にまっしぐら。歌無歌謡でトランペットと言えばこの人、荒尾正伸をフィーチャーしてのキング第2作。意外とガーリーな作風に映える音なのが、キング独特のサウンドメイクであらわになりまくる。とにかく冒頭のタイトル曲が強力だ。あらゆる歌無盤にフィーチャーされているけど、やはり本家メーカーが最も的確な答えを提示したようで、まさかトランペットからこんなお茶目な響きを誘き出すなんて。抑揚を与えるのさえ難しい楽器ではあるが、この曲での表情の付け方なんて見事としか言いようがないし、2コーラス目に入るとさらにあざとく誘惑してくる。「粋なうわさ」オーケストレーションや多重録音による演出もキングらしい技もので、激しい揺れを生み出すことなく音全体が前面に押し出されてくる、他社では味わえない感触。「くれないホテル」にはもう少しデカダンな色が欲しかったという気がするけど、なかなかの健闘ぶり。「夜明けのスキャットの荒廃した感覚も他とちょっと違う。変えられがちな箇所と違うところのコードが変えられているせいだろうか。2コーラス目で突然食い込む女性スキャットもクールだ。「お気に召すまま」はお得意の一人二役デュエットで、片方の音にはEQ操作もかましてより効果を上げているようだ。カラフルなサウンド作りで桃源郷を見せてくれる1枚。