黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は伊藤蘭さんの誕生日なので

ミノルフォン KC-91

オリジナル・サウンド・シリーズ 最新ヒット歌謡

発売: 1976年2月

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ジャケット

 

A1 センチメンタル (岩崎宏美) 🅴

A2 ひとねむり (南沙織)

A3 北へ帰ろう (徳久広司) 🅲→7/26

A4 ゆれてる私 (桜田淳子) 🅱

A5 ふたりの旅路 (五木ひろし) 🅱→7/26

A6 となりの町のお嬢さん (吉田拓郎) 🅱→7/26

A7 めまい (小椋佳) 🅲

A8 貴方につくします (八代亜紀) 🅰→7/26

B1 あの人の船行っちゃった (森昌子)

B2 青空、ひとりきり (井上陽水) 🅱

B3 心のこり (細川たかし) 🅰→5/13

B4 美しい愛のかけら (野口五郎) 🅳

B5 時の過ぎゆくままに (沢田研二) 🅱→7/26

B6 ロマンス (岩崎宏美) 🅲→7/26

B7 ハートのエースが出てこない (キャンディーズ)

B8 シクラメンのかほり (布施明) 🅴→5/13

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ&ストリングス

編曲: 福井利雄、矢野立美

定価: 1,800円

 

2枚組ものの方が圧倒的にお得だし、内容のユニークさが期待できないけれど、ブルーナイト・オールスターズの全容を把握するのに1枚ものの存在は素通りできない。その「90番台」にあたる76年の盤の内、1枚だけ手元にあるのがこれで、ジャケットのイラストには贅沢にも、山口はるみ氏を起用。そのヴィヴィッドな「エアブラシギャル」の存在感が、例えば「あの人の船行っちゃった」みたいな世界観とは一線を画してはいるけれど、これもミノルフォンのやる気なんだなと納得する。翌年からの小梅ちゃん路線への序曲として見逃せないが、それだけ持っていない2枚への恋心が募るのだ。たとえ2枚組と全曲重なっていようがだ(汗)。

一曲目の「センチメンタル」からして強力な選曲だけど、2ヶ月後の4月にミノルフォンの演奏盤シングル規格・PAの6番目のリリースとして、ミノルフォン・F.D.オーケストラ名義による「運動会用レコード」が発売されており、そちらの出来が気になるのだ。但し、このアルバムと同じく福井利雄氏がアレンジを手掛けているので、同テイクの可能性も(ミックスだけ変えていたりして)。ちなみにそのB面は、当時日本盤レコード史上最大のヒットを記録していたアレのB面曲「いっぽんでもニンジン」だった。こちらは、通常歌無アルバムで取り上げられた例はほぼ皆無だろう。ともあれ、あまり歯切れの良い演奏とは言えないけど、いいヴァージョンで、当時既に活動を終えていた東宝のミラクルサウンズを思い起こさせる鍵ハモのリードメロディが、スカッとした気分にさせる。これでフォークダンスするのも悪くないでしょう(汗)。続く「ひとねむり」は地味な選曲だけど、本作ではヒロリン以外では唯一の筒美京平作品。2本のフルートが気怠そうにデュエットする、午後の微睡に誘うヴァージョンだ。「ゆれてる私」マリンバが弾み、ピッコロが舞う乙女心たっぷりのサウンド。「あの人の船行っちゃった」の間奏の笛は、尺八と指笛を合わせたような音だが、これもリコーダーの特殊奏法だろうか。これを聴くと、さすがの徳間も「ひらけ!チューリップ」の歌無盤を残さなかったのが惜しい、と思ってしまう(汗)。「青空、ひとりきり」レニー・クラヴィッツ「自由への疾走」とマッシュアップしたくなる演奏(爆)。この曲や「美しい愛のかけら」で前面に出てくるディストーションサウンドが、76年の都会色と不釣り合いで面白い。

他の曲は前年暮れの2枚組からキャリーオーバーされた曲が多いが、最後に「ハートのエースが出てこない」という必殺曲が控えている。「春一番」前のキャンディーズ曲(もっと端的には解散宣言後初の「アン・ドゥ・トロワ」前とさえ言ってもいい)は、歌無盤で取り上げられるのはぽつぽつといった印象で、それだけ演奏だけに置き換えるのが困難だったと言ってしまうと贔屓の極みと思われるのかな…ここでは、この時期のブルーナイトには珍しいシンセの使用で、若々しさを強調している。1月にはもう一日、キャンディーズ絡みの重要な日がありますが、果たしてどの曲を含む盤が出てくるでしょうか…あと2日お待ち下さい…