RCA JRS-9512
シクラメンのかほり/フォーク・バイオリンの調べ
発売: 1976年
A2 めまい (小椋佳) 🅳
A3 傾いた道しるべ (布施明) 🅳
A4 想い出まくら (小坂恭子) 🅴
A5 無縁坂 (グレープ) 🅱
A6 精霊流し (グレープ) 🅶
B1 「いちご白書」をもう一度 (バンバン) 🅶
B2 あの日にかえりたい (荒井由実) 🅶
B3 かりそめのスウィング (甲斐バンド)
B4 22才の別れ (風) 🅵
B6 心もよう (井上陽水) 🅺
演奏: 志賀清 (ヴァイオリン)とストリングス・ロマン
編曲: 松井忠重
定価: 1,800円
ユーミンの誕生日には、本来その曲だけを取り上げたアルバムをキャスティングしていたのですが、力作ではあるものの、その手のニューミュージック系単独アーティスト・カヴァーアルバムとなると、どうしてもこのブログの行きたいのと別の方向を指し示されるようで、なんか気が引けるのですよね。
というわけで、その代わりに持ってきたのが、当ブログ初登場、主役がヴァイオリンというこの異色アルバム。どうしても、高貴なイメージがあり、単独で演奏すると歌無歌謡のイメージと不釣り合いになるけれど、それとは逆に「コルネット・ヴァイオリン」という、日本の歌謡界で独特の発展を遂げた変種楽器があり、それをフィーチャーした演奏盤もそれこそ古くから多数作られている。例えば、いとう敏郎盤の「神田川」など、演歌からかけ離れた歌無レコードにも使用例があって、傍流として避けて通れない。もちろん、ストリングス・セクションの主役楽器としても欠かせないし、その色彩感溢れるサウンドは、昨今のJ-popの作り手の皆さんに堂々と突き付けたい位である。
ソロ楽器としてのヴァイオリンは、この頃になるとフォーク界にも個性を覗かせ始めており、特にグレープでのさだまさしの使用例は有名だし、この盤が出た76年には、ヴァイオリン奏者を擁する米国のプログレ・ハードロック・バンド、カンサスのレコードが日本で初紹介されたりもして、新たなファン層を切り開きつつあったのだ。そんなタイミングで、この盤が作られたのも納得としか言えない。さすがに百恵や淳子の曲をこういう演奏でなんて、奏者そのものがアイドルじゃない限り有り得ないし(汗)、その音色がしっくりくるのはやっぱり、フォークなのかなと。
のっけから小椋佳のリリカル曲3連発で挨拶代り。1曲異なるとは言え、同じRCAの横内章次の盤のラスト3曲に呼応した形になる。今では演歌にカテゴライズされそうな「想い出まくら」もフルートと絡みつつ、詩的にこなしているし、A面の締めのグレープ曲はまさに本領発揮。さだプレイより、当然育ちのいい印象(爆)。「精霊流し」はここではレズリー使用のピアノも入り、キングやユピテル盤程ではないがミステリアスな仕上がりだ。B面トップのユーミン曲2連発はお嬢様度半端なく、ファッショナブル面から捉えると落ち着かない。その次の「かりそめのスウィング」は異色すぎる選曲だが、不思議と様になっている。ブルーナイト・オールスターズ盤「裏切りの街角」も主旋律はヴァイオリンだったし、意外とそういうイメージだったんでしょうかね。ラスト3曲の王道3連発は、もう余裕という感じで聴かせる。後2曲はテンポ落としすぎだけど、回顧的側面を押し出した結果だろうか。
ジャケットは音そのもののおしとやか性に比べると遥かにライトなイメージで、楽器が登場していないのが残念だけれど、これは帯を完全に取るしか術がありませんでしたね…(瀧汗)。