黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は平浩二さんの誕生日なので

CBSソニー SOLH-8

歌謡ワイドスペシャル 若葉のささやき/春のおとずれ

発売: 1973年5月

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ジャケット

A1 若葉のささやき (天地真理) 🅲→7/16

A2 狙いうち (山本リンダ) 🅱→7/16

A3 夜の走り雨 (森進一) 🅴

A4 早春の港 (南沙織) 🅲

A5 怨み節 (梶芽衣子) 🅱→7/16

A6 ふたりの日曜日 (天地真理) 🅳

A7 劇場 (ちあきなおみ) 🅴

A8 赤い風船 (浅田美代子) 🅳→7/16

A9 女のねがい (宮史郎とぴんからトリオ) 🅵

A10 夜明け前 (平浩二)

B1 春のおとずれ (小柳ルミ子) 🅱→7/16

B2 愛への出発 (郷ひろみ) 🅱→7/16

B3 円山・花町・母の町 (三善英史) 🅱→7/16

B4 男泣き (内山田洋とクール・ファイブ) 🅳

B5 喝采 (ちあきなおみ) 🅵

B6 漁火恋唄 (小柳ルミ子) 🅷

B7 太陽のくちづけ (栗田ひろみ) 🅱

B8 しのび逢い (尾崎紀世彦) 🅲

B9 中学三年生 (森昌子) 🅰→7/16

B10 同棲時代 (大信田礼子) 🅰→7/16

 

演奏: クリスタル・サウンズ

編曲: 土持城夫

定価: 1,500円

 

クリスタル・サウンズ栄光の歴史はこのアルバムで始まった…『映画音楽/ムード音楽ワイド・スペシャル』6作でスタートしたSOLH品番シリーズが、満を持して送り込んだ久々の歌謡インスト作品集で、以降約9年間に渡りこの制作スタンスを維持。カラオケに主流が傾くに従い、音作りの傾向は変化するわけだけど、特に初期の頃の軽さ・ポップさに主軸を置いたスタイルは、従来の歌無歌謡の場末性と一線を画したもので、ジャケットの作りもその内容を反映したものになっている。ワーナー・ビートニックスの「洗練感」に比べると、あくまでもお洒落感を全面に出しているイメージ。この作品で取り上げられている歌手名を並べてみても、歌謡最前線にあるファッショナブル性が重視されているというか、当時のソニーの社風と見事に合致しているではないか。なお、活動初期には、洋楽のカヴァー盤もいくつか、この名義で発表されていたのだ。

初期リリースの凝縮盤として出された2枚組『歌謡ワイドワイドスペシャル』に9曲が流用されているが、それ以外の11曲にも注目曲が目白押し。ただ、後に出されたSOLH-37や38に比べると、アレンジ面でのカラフルさは希薄。安定した音作りで気軽に付き合えるし、演奏時間もフル演奏ではあるものの、後の作品ほど無茶しているイメージはない。既に歌無盤で実績を残しまくっている土持氏の軽技が、全体の雰囲気を統一している。他の盤ではこけまくり感を露呈する場になりがちな「早春の港」も、簡素化された音作りながら爽やかさは保たれているし、見せ場であるフルートソロにははりきりの跡がはっきり刻印されている。「赤い風船」もピッコロで高音を重ねて足取り軽く。この「軽さ」こそが、73年当時においては清涼感の素だったわけで。思わず、律子さんになった気分でストライク連発といきたくなる。

黄昏みゅうぢっくを開始した段階では、「最初に◯◯のはこの人になるのかも…」とついつい心配させる報も伝わった平浩二さんだったが、今なおお元気そうで安心。ここで取り上げられた「夜明け前」は「バス・ストップ」に続く新曲ながら、55位止まりと惜しい結果に。複数のオールディーズ曲を掛け合わせたようなAメロが、思いっきりニヤリとさせる隠れた名曲だ。「円山・花町・母の町」も、恐らく山内さんと思われる琴と京琴をフィーチャーしつつ、あっさりと軽量化した仕上がり。ラストの「同棲時代」は自社強力推しの立場上か、明らかに気合の入れ方が違うサウンドで、綺麗な幕引きだ。あと、オーボエがここまで多用された歌無盤は他にないのでは?しばらく経つと、リコーダーがその役を奪ったということでよろしいのかな。