黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日はテレサ・テンの誕生日なので

クラウン GW-3041~2

ヒット歌謡ベスト36 北航路/愛の終末

発売: 1974年10月

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ジャケット

A1 北航路 (森進一)Ⓐ 🅳

A2 想い出のセレナーデ (天地真理)Ⓓ

A3 秋日和 (あべ静江)Ⓐ

A4 傷だらけのローラ (西城秀樹)Ⓓ 🅱

A5 浜昼顔 (五木ひろし)Ⓔ 🅱

A6 ふれあい (中村雅俊)Ⓓ 🅴

A7 精霊流し (グレープ)Ⓔ 🅵→12/22

A8 愛ふたたび (野口五郎)Ⓐ

A9 夕立 (井上陽水)Ⓓ

B1 愛の終末 (チェリッシュ)Ⓓ

B2 ちっぽけな感傷 (山口百恵)Ⓐ 🅲

B3 淋しがりや (梓みちよ)Ⓓ 🅱

B4 結婚するって本当ですか (ダ・カーポ)Ⓔ 🅳→12/22

B5 恋の大予言 (フィンガー5)Ⓓ

B6 風のいたみ (りりィ)Ⓐ 🅱

B7 追憶 (沢田研二)Ⓔ 🅳

B8 夜霧の街 (南沙織)Ⓓ

B9 ミドリ色の屋根 (ルネ)Ⓔ

C1 夫婦鏡 (殿さまキングス)Ⓔ 🅶

C2 美しき誤解 (和田アキ子)Ⓓ

C3 手のひらの秋 (藍美代子)Ⓐ

C4 愛の詩を今あなたに (布施明)Ⓓ 🅲

C5 二人の玩具箱 (ピクル)Ⓐ

C6 帰らざる日のために (いずみたくシンガーズ)Ⓓ

C7 空港 (テレサ・テン) 🅱

C8 夏の終り (キャロル)Ⓐ

C9 灰色の瞳 (加藤登紀子長谷川きよし)Ⓒ 🅲→1/2

D1 うすなさけ (中条きよし)Ⓐ 🅲

D2 天使のささやき (スリー・ディグリーズ)Ⓓ 🅲

D3 ひとり囃子 (小柳ルミ子)Ⓒ 🅱→1/2

D4 愛ひとすじ (八代亜紀)Ⓐ 🅴

D5 渚のささやき (チェリッシュ)Ⓔ

D6 さらば友よ (森進一)Ⓕ 🅴

D7 シンシア (吉田拓郎かまやつひろし)Ⓔ 🅰→12/22

D8 君は特別 (郷ひろみ)Ⓓ 🅱

D9 妹 (かぐや姫)Ⓑ 🅰→11/28

 

演奏: まぶち・ゆうじろう’74オールスターズⒶⒻ

いとう敏郎と’74オールスターズⒷ

山下洋治と’74オールスターズⒸ

岡山かずよしとセブン・ビートⒹ

水谷公生&トライブⒺ

編曲: 新井英治Ⓐ、小杉仁三Ⓑ、井上忠也Ⓒ、青木望Ⓓ、原田良一Ⓔ、若草恵Ⓕ

定価: 3,000円

 

またクラウンか…と言ってられない。これは色々と訳ありで、故に重要盤だ。色々と重なってはいるけれど、初登場ヴァージョンじゃないのは6曲しかない。

9月に出た『秋日和・ちっぽけな感傷』(GW-5309)という1枚ものがあり、昨年7月15日にそのアルバムを語るエントリを準備していたが、こともあろうに村木賢吉さんの追悼を優先し、一旦引き下げた。このアルバムは、実はSNS上でのとある重要な出会いのきっかけを作った1枚であり、それ故に語る気満々だったのだが、その収録曲中、まぶち・ゆうじろう’74オールスターズの「想い出のセレナーデ」とありたしんたろうとニュービートの「ひと夏の経験」を除く全ての曲が、のちに手に入れたこの2枚組、及び1月2日取り上げた『恋のアメリカン・フットボール/もう一度』にも収録されているのである。先に語ってしまったのならしょうがないが、明日以降それを語っても意味ないし、ということで現在のところは「幻の記事」になることが確定した。Mさんごめんなさい…

しかし、そのアルバムとの数奇な関係で、見逃せないものが一つある。ニュービート名義でもう1曲、「君は特別」が収録されているのだが、それと全く同じヴァージョンにしか聴こえないものが、今作に「岡山かずよしとセブン・ビート」扱いで収録されているのだ。いくらなんでも、ドラムを差し替えるとかミックスを変えるとかしてるでしょと、何回も聴き比べたが、どう考えても同じ演奏である。おそらく、74年9月と10月の商品企画の間のある時期に、ありたしんたろうの従来の「中の人」との間に何らかの問題が発生したか、その手のことがあったのかもしれないし、それに先立つアルバムのドラミングも、従来と違うなと感じさせるところもあったりして、中の人そのものが自然と岡山和義氏(もしくは別のドラマー)に入れ変わったのではという線も考えられるのだ。この年の初めには、東宝盤でばしばし決めまくっていた岡山氏も、「繋ぎ要員」としてクラウンに迎え入れられたのだろうか。セブンビート名義の単独アルバムは、同じく10月に『愛の終末・夕立』(GW-7069Q)がリリースされており、「君は特別」以外の同名義の曲はそこから引っ張ってこられたものである。マイク・オールドフィールド「チューブラー・ベルズ」やモット・ザ・フープル「ロックンロール黄金時代」まで演っている…めちゃ聴きたい。そして翌年には、まぶち・いとう両者の名前も、クラウンの歌無盤のクレジットから抜け落ちることになってしまう。

そんなドラマを孕んだ1セットであるけれど、音楽的に注目すべき点も多く、キャロルの曲が通常の歌無盤に収録されているのは極めて珍しいし、当時日本語ヴァージョンも出ていたとは言え、スリー・ディグリーズの「天使のささやき」が選曲されているのも異例。いずれもクラウンサウンドに違和感なく溶け込んでいる。自社推し枠には、のちにジャニーズ所属のソロ歌手として再デビューした未都由が在籍したデュオ、ピクルの「二人の玩具箱」なんていうカルトな選曲も。セブンビートの曲はいずれも、ニュービートと地続きとして考えれば素直に楽しめるが、問題作「恋の大予言」の解釈はまだおとなしい方だ。

そして、『秋日和・ちっぽけな感傷』との関係も含め、もっと重要なのはこのセットでも異彩を放ちまくる水谷公生&トライブ」の登場なのだが、こちらはあと1ヶ月ほどしたら熱く語りますので今日はこの辺で。