黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は石川さゆりさんの誕生日なので

コロムビア KS-7030

ギターとテナー・サックスによる有線ヒット歌謡 置き手紙/北酒場

発売: 1976年7月

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ジャケット

A1 置き手紙 (細川たかし)Ⓐ

A2 北酒場 (五木ひろし)Ⓐ 🅴

A3 嫁に来ないか (新沼謙治)Ⓑ 🅱

A4 東京砂漠 (内山田洋とクール・ファイブ)Ⓐ 🅲

A5 命ばらばら (ぴんから兄弟)Ⓑ

A6 北の宿から (都はるみ)Ⓒ 🅸

B1 ふたりづれ (八代亜紀)Ⓑ 🅲

B2 つくり花 (森進一)Ⓐ 🅲

B3 あいあい傘 (石川さゆり)

B4 恋岬 (小柳ルミ子)Ⓐ 🅲

B5 さくらの唄 (美空ひばり)Ⓑ 🅲

B6 ただひとり (都はるみ)Ⓑ

 

演奏: 木村好夫 (ギター)、ジェイク・コンセプション (テナー・サックス)/コロムビア・オーケストラ

編曲: 甲斐靖文Ⓐ、山田良夫Ⓑ、坂下晃司Ⓒ

定価: 1,800円

 

津軽海峡冬景色」の大ヒット以降、しばらくは歌無歌謡アルバムの常連と化していた石川さゆりだが、それ以前の曲もぽつぽつと取り上げられており、特にコロムビア以外の盤はレアである。実はそれまでにも9曲チャート入りヒットがあって、純情演歌の星として期待されていたので別に不思議なことではないのだけど、頻度的には片平なぎさ伊藤咲子あたりとどっこいどっこいだ(岡田奈々木之内みどり林寛子あたりになるともっとレアだが)。本作で取り上げられている「あいあい傘」は「津軽海峡」の二つ前のシングルで、30位と安定の位置にチャートイン。発売間もなく取り上げたこの歌無盤を聴くと、イントロがゴールデン・カップスの「長い髪の少女」に似てるなという感想しか出てこないが、オリジナル盤はそれこそ純情の塊のような出来で、歌謡曲全般でも有数の「リコーダーが印象的」な作品。73~74年に出されていたら、もっとヒットしてたのではないだろうか…その辺の萌え要素を全て剥奪しての無味乾燥なアプローチ。その場末感に「そりゃないよね…」と言いたくもなってしまうけど、それこそが歌無歌謡の醍醐味。むしろ意外な曲にリコーダーが登場するのを見つける方がずっと快感なのだ(汗)。

名手二人を前面にフィーチャーしての、76年夏の演歌最前線的ヒット集。このあたりから多少地味な存在へと傾き始める細川たかし「置き手紙」から始まる自社尊重路線だが、まさか続く北酒場と同名の曲を後に代表曲としてしまうとは、この盤を企画した人も予測してなかっただろう。こちらの作曲者の岡林信康も当時コロムビア所属だったので、これもある意味自社推し。最近全く予期せぬところから話題となった「嫁に来ないか」やら、永遠のスタンダード「北の宿から」など、半数以上が自社曲で意地を見せている。奇をてらったアレンジに走らず、あくまでも空気のようにさりげない寄り添い方。全然密ではないスナックでママさんと二人きりのお供に最適みたいな、そんなアルバムだ。ところでジャケットのモデルは誰なのだ…コロムビアの歌手という線が考えられるが(明らかに裏焼きですが)。