黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1977年、今日の1位は「青春時代」(3週目)

東芝 TP-72378~79 

今宵踊らん '77~'78ゴールデン・ヒット

発売: 1977年

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ジャケット

A1 フィーリング (ハイ・ファイ・セット)Ⓐ 🅵

A2 あずさ2号 (狩人)Ⓒ 🅲

A3 酒と泪と男と女 (河島英五)Ⓐ 🅳

A4 勝手にしやがれ (沢田研二)Ⓑ 🅵

A5 失恋レストラン (清水健太郎)Ⓑ 🅱

A6 イミテイション・ゴールド (山口百恵)Ⓐ 🅲

A7 青春時代 (森田公一とトップギャラン) 🅴

B1 ホテル・カリフォルニア (イーグルス)Ⓐ

B2 コスモス街道 (狩人)Ⓒ 🅲

B3 どうぞこのまま (丸山圭子)Ⓒ 🅴

B4 センチメンタル・カーニバル (あおい輝彦)Ⓑ

B5 帰らない (清水健太郎)Ⓑ 🅳

B6 マイ・ピュア・レディ (尾崎亜美)Ⓑ 🅱

B7 スカイ・ハイ (ジグソー)Ⓐ 🅱

C1 星の砂 (小柳ルミ子)Ⓒ 🅲

C2 サクセス (ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)Ⓐ

C3 カントリー・ロード (ジョン・デンバー)Ⓒ

C4 ジョリーン (ドリー・パートン)Ⓐ

C5 ペイトン・プレイスのテーマⒸ

C6 津軽海峡冬景色 (石川さゆり)Ⓒ 🅶  

C7 渚のシンドバッド (ピンク・レディー)Ⓐ 🅳

D1 能登半島 (石川さゆり)Ⓒ 🅳

D2 恋人よ (清水健太郎)Ⓒ

D3 カルメン'77 (ピンク・レディー)Ⓒ 🅴

D4 昔の名前で出ています (小林旭)Ⓑ 🅳

D5 悲しきギター・タンゴ (シャドウズ)Ⓑ

D6 ダイアナ (ポール・アンカ)Ⓐ 🅱

D7 ハートブレイク・ホテル (エルヴィス・プレスリー)Ⓐ 🅱

 

演奏: 奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ

編曲: 五十嵐謙二Ⓐ、山本有信Ⓑ、高野志津男Ⓒ

定価: 4,000円

 

「青春時代」の真ん中で社交ダンスに燃えた人達は、今もこのアルバムの音楽に熱くなるのだろうか…というわけで4回目となる『今宵踊らん』の登場。最早安定としか言えないブルースカイ節がムーディーに盛り上げます。「フィーリング」は寧ろ、こういうムードにはぴったりな選曲と言えそう。海外では寧ろ「70年代チージーの象徴」みたいに扱われ、若々しいイメージと直結することは考えられないだけに、納得ではあるのだけど、この大団円がくると「やっぱりね」とついつい、敬礼せずにいられなくなるのだ(汗)。続くあずさ2号がテンポ・アレンジとも前曲をスムーズに踏襲しているだけに、余計滑稽である。酒と泪と男と女がこんなに無邪気に肩を寄せ合える曲だったなんて…勝手にしやがれでこんなに軽く帽子を振り回せるなんて…「イミテイション・ゴールド」もドレスがゆらゆらする様が目に浮かぶ。とどめに「青春時代」でその場は一斉乱舞。今じゃ絶対あり得ない、無心に歳を忘れられるひとときだ。

挨拶代わりのようなA面が終わると、本盤のヤマ、ホテル・カリフォルニアに突入。原曲のレトリックを完全に剥ぎ取った、場末感溢れるルンバに変貌している。カリフォルニア地獄じゃまず流れないだろう、お客さんの思考能力を弁えないこの解釈ぶり。1コーラス終わったら直ちにギターソロの最終部分にワープして、6小節でお決まりの大団円に。天晴の2分16秒。少なくとも2種類あるパチ洋楽ヴァージョンや、タンポポの日本語カバー、さらに山本由香利の「セザンヌの絵のように」と併用して大変なことにしたいです(爆)。

この1曲であとはどうでもいいという感じになりますが、以後も軽いサンバ的解釈になっているスカイ・ハイや、ジブリ版しか知らない人に対しては大ネタになりそうなカントリー・ロードなど使えそうなブツが満載。渚のシンドバッドはこのシリーズにしては珍しく、素直に踊れないリズムに改変されており、バスドラがブンブン唸っている。イエスのあの曲の影響をオリジナル以上に強調しているようだ(まさか)。カルメン’77」は「あずさ2号」と明確に区別するため(?)、超高速ヴァージョンになっている。小杉仁三氏が聴いたらどう思うか想像したい昔の名前で出ていますのタンゴ解釈も痛快で(一瞬「白鳥の湖」が姿を表すのはなんなのか)、最後にはエルヴィス追悼もちゃっかり。「イミテイション・ゴールド」で歌い出しを端折ったのはこれへの伏線か?オリジナル・ロックンロール世代にまで気を遣った、過ぎ去りし青春時代を踊り飛ばすための罪な2枚である。