黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1969年、今日の1位は「ブルー・ライト・ヨコハマ」

デノン CD-5005

グッド・ナイト・ベイビー ワンダフル・ギター

発売: 1969年2月

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ジャケット

A1 グッド・ナイト・ベイビー (ザ・キング・トーンズ) 🅴

A2 ブルー・ライト・ヨコハマ (いしだあゆみ) 🅵

A3 愛の奇跡 (ヒデとロザンナ) 🅵

A4 雨の赤坂 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅱

A5 みずいろの世界 (じゅん&ネネ) 🅲

A6 涙の季節 (ピンキーとキラーズ) 🅴

A7 帰り道は遠かった (チコとビーグルス) 🅱

B1 マンチェスターリヴァプール (ピンキーとフェラス) 🅳

B2 グディ・グディ・ガムドロップス (1910フルーツガム・カンパニー) 

B3 リトル・バード (ナンシー・シナトラ)

B4 悲しき天使 (メリー・ホプキン) 🅲

B5 リトル・アロー (リーピー・リー)

B6 白い恋人たち (フランシス・レイ) 🅶

演奏: 木村好夫とザ・ビアーズ

編曲: 木村好夫

定価: 1,800円

 

好夫ギターとサイケの邂逅。なんかしっくりこない感じだけど、いつもの整った歌謡オーケストラ・サウンドから解放されたこじんまりとしたノリで、洋風のナンバーをこなす様からは、場末感以上にこの世のものではない感覚がもたらされ、故に「サイケ感」が濃厚に漂ってくる。時代的にサイケは終わっていたけれど、この盤が見せてくれるのはそんな世界だ。当時のコロムビアは、CBSソニーに持っていかれた恨みを晴らすように、欧米のマイナーなサイケのレコードをこっそりリリースしまくっていたけど、ジャケットの色使いがその影響を感じさせる。

冒頭の「グッドナイト・ベイビー」からして、おなじみのあの好夫タッチに忍び寄るオルガンの音が、9thコードを強調して別世界感濃厚。無機質な響きが余計異次元感を募らせる。「ブルー・ライト・ヨコハマ」のドラマティックなイントロの演出も然り。ここから見えてくる灯の色は、海の色ではない何かだ。「愛の奇跡」でブラスが入って賑々しくなるが、ベースのフレージングは結構トリッピーな感じだ。「雨の赤坂」三原綱木が安心してムゲンで踊れる仕様にアレンジ(爆)。「帰り道は遠かった」はさすがにコロムビア盤なので、どちらかというとジェノバに歩み寄ったアレンジになっているが、これも結構踊れるヴァージョンだ。

B面は洋楽を取り上げており、マンチェスターリヴァプールは一気に場末色を増した、というか歌謡曲そのもの。不気味なほどワウペダルを踏みまくっているのは珍しい。「グディ・グディ・ガムドロップス」はバブルガムなオリジナル以上に重厚なサウンドで、特にリズムギターが健闘。「リトル・アロー」は選曲自体がレアで、こちらもワウ全開の派手なサウンドで迫る。ラスト白い恋人たちはガットギター合奏による安息の場所。これも1日でちょちょい録音という、達人の集中力が伝わってくる1作だ。